第90回記念選抜高校野球大会(3月23日開幕、甲子園)の選考委員会が26日、大阪市内で開かれ、東北勢からは4校が選ばれた。秋季東北大会初優勝の聖光学院(福島)は5年ぶり5度目、同4強に入った日大山形が36年ぶり4度目の出場を決めた。花巻東(岩手)は6年ぶり3度目、21世紀枠では由利工(秋田)が選ばれ初出場。組み合わせ抽選会は3月16日に大阪市内で行われる。

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 ライオンとなって東北勢初の日本一に食らいつく。出場決定に、聖光学院の矢吹栄希(はるき)主将(2年)は「日本一になって、福島に帰ってきます」と宣言。「自分たちはヤギみたいな優しいチームと(斎藤智也)監督さんにも言われてきた。優しさは甘さだった。『ヤギからライオンに変わる』をテーマに秋からやってきた。センバツでは動物的、野性的に戦い抜きます」。降り積もった雪上で、目をぎらつかせた。

 初めて東北を制して臨んだ明治神宮大会が“ヤギ”の象徴だった。初戦となった準々決勝の創成館(長崎)戦。矢吹、五味卓馬、須田優真(ともに2年)のクリーンアップを中心に福島県大会と東北大会の計8戦80得点。斎藤監督も「近年最強」と自負する打線には、気迫が欠けていた。2点差の9回2死二、三塁で三振した矢吹は「今でも、夢の中に出てくる。弱気になって勝負どころで初球からいけなかったメンバーも多かった」。奮起の源だ。

 昨秋から「2年生ミーティング」を毎日欠かさない。30分から1時間かけて集まり、意見を言い合う。深夜0時に食堂に集まった時もある。「自分があそこで負けていたから勝てなかった。あいつも変えなければ負けるんだ」。練習の1つ1つを自他ともに厳しく振り返る。練習メニューも自発的に変えた。“獲物”のボールに食らいつくため室内練習場で約10メートルの距離で投手の速球を、重い1キロバットで打ち続ける。20、21日には今年初の紅白戦を開催。矢吹は「みんなの気持ちが変わった成果が見えた。ライオンになれそうです」と笑みを浮かべた。

 指揮官も「甲子園は、食うか食われるかのジャングル。選手たちに甲子園に行けたなんて気持ちが排除されているのが頼もしい」と手応えを得ている。闘志むき出しに、優勝旗を“狩り”に行く。【鎌田直秀】