14年ぶり14度目出場の金足農(秋田1位)が専大北上(岩手2位)を4-1で破り、17年ぶりに1勝を挙げた。最速147キロのエース右腕・吉田輝星(3年)が9回3安打8奪三振1失点で完投。圧倒的な投球内容に、敵将の中尾孝義監督(62)は脱帽した。かつて巨人時代にバッテリーを組んだ桑田真澄氏(50)を引き合いに出し大絶賛。「東北NO・1右腕」を襲名し、84年以来2度目の優勝まで一気に駆け上がる。

 淡々と右腕を振りかざすだけでよかった。吉田は2回以降、完璧な投球を見せた。初回こそ安打と暴投が重なり内野ゴロの間に先制点を許したものの、その後に許した走者は2安打1四球1失策(遊撃)の4人のみ。プロ12球団が視察に訪れた中、スカウトのスピードガンでこの日は最速146キロを計測した。「初回の入りが悪くて50点ぐらい。裏にみんなが返してくれたので、今日はみんなのおかげ」と余裕の表情を浮かべ、汗をぬぐった。

 吉田のすごさを際立たせたのは試合後に発した敵将の言葉だった。中日、巨人などでプレーした中尾監督は吉田の完璧な投球に思わず脱帽。かつての相棒を引き合いに出し、絶賛した。

 中尾監督 うわさには聞いていたけど、いい投手やった。たとえるなら桑田みたいな感じ。制球、フィールディング、けん制。すべてのレベルが高くて、高校では見たことない。野球センスがずばぬけている。

 まるで“桑田2世”だった。初回に直球が狙われていると察知すると、2回以降はスライダーやツーシームを多投して狙いを外した。平常時は力を抑え、追い込むとアクセルを踏むギアチェンジ投法を披露。「追い込むまで打たせて取って、追い込んでからは1球で三振を奪うのが理想」。本家をほうふつとさせる硬軟自在のクレバーな投球を見せ、109球で料理した。

 目標は甲子園1本だ。「東北NO・1右腕」の今後の進路に注目が集まるが、「今は考えていない。甲子園に行って勝ち続ける。今のところはそれしか考えていない」と宣言。84年以来2度目の東北大会優勝をステップに、11年ぶりの夏につなげる。「東北大会に出る以上は、自分たちの野球をして優勝したい」。吉田の右腕が秋田の夏を、そして東北の夏を独占する。【高橋洋平】