<高校野球和歌山大会:向陽5-0和歌山高専>◇14日◇2回戦◇紀三井寺公園野球場

 雲の上の存在である大先輩の背中を追っている。今夏、7年ぶりに夏のシードを獲得した向陽(和歌山)は、和歌山高専に5-0で勝利し初戦を突破した。先発したエースの小林亮太投手(3年)は初回の2死満塁のピンチを無失点で切り抜けると、危なげないピッチングで8回を投げ被安打はわずか2。「初戦にしてはいいピッチングができた」と完封勝利に貢献した。

 向陽野球部は1921年(大10)に創部され、旧制の海草中時代に1939年、1940年の夏の甲子園を連覇した伝統校。39年は戦争で若い命を散らした伝説の投手・嶋清一さん(享年24)を擁して優勝した。小林も入部時に配られた嶋さんの評伝を、ストレッチ時などに読んでいる。校内には嶋さんの記念館もある。毎年8月中旬の新宮との定期戦は、新宮中から海草中に転校し嶋さんと同級生だった、古角俊郎さんの名前を取って「嶋古角杯」と呼ばれている。

 偉大な存在を身近に感じる環境がある。小林は「甲子園で準決勝、決勝とノーヒットノーランを達成された。雲の上の存在ですごすぎる方だけど、向陽のピッチャーが最大の目標にするなら嶋さん」。向陽の背番号1を背負う責任感を、白球に込める。【磯綾乃】