<高校野球東兵庫大会:尼崎工1-4星陵>◇15日◇2回戦◇明石トーカロ球場

 声援が響く球場でも、相手ベンチまで聞こえる。「まだまだこっからや!」。その声は、尼崎工(東兵庫)の主将・近江瑞月マネジャー(3年)だ。昨年の新チーム発足後主将に就任。全国的にも異例の女子主将として1年間チームを率いてきた。

 「今日からお前が主将や」。昨年7月、夏の大会に敗れた帰り道で舟越明斗監督(42)から突然の指令を受けた。驚きを隠せなかったが、「一番勝ちたい気持ちが強い、お前しかいない」。その言葉を聞いて、覚悟を決めた。当初は「プレーしないのに気持ちが分かるのか」と思う選手もいたという。不安もあったが、中学1年までプレーしたサッカーで培った負けん気の強さで、チームはまとまっていった。中島翔生外野手(3年)は「常に声で引っ張ってくれた。僕たちの大きな支え」と存在の大きさを語った。

 初戦を突破して迎えたこの日の星陵戦は、4回に2点を先制され苦しい展開に。劣勢でも「まず1点、まず1点や!」と鼓舞し続けた。誰よりも勝利を欲したからこそ、試合後は号泣。それでも、最後は感謝の気持ちでいっぱいになった。「みんなよくやってくれた。私は幸せです」。主将らしく堂々言い切った。【中野椋】