盛岡大付(岩手)が盛岡市立を6-0で下し、夏3連覇に王手をかけた。先発したエース左腕の松本跳馬(しゅうま、3年)が9回3安打7奪三振無失点で初完封をマーク。春夏連続甲子園を狙う花巻東は一関学院を8-1の8回コールドで、3年ぶりの決勝進出を決めた。第100回の岩手の夏決勝は、4年ぶりに黄金カードが実現。前回の14年決勝は松本の兄、裕樹(22、現ソフトバンク)が本塁打を放って完投し、5-4で盛岡大付が制した。掲げる野球が対照的なライバル2校が、火花を散らす。

 舞台は整った。エース左腕の松本が9回初完封で締めくくり、夏3連覇に王手をかけた。第100回の夏決勝で4年ぶりに黄金カードが実現。現チーム初となるライバル花巻東との伝統の一戦を前に、背番号1は静かに闘志を燃やした。

 松本 相手はセンバツを経験して強いチーム。投手が0点に抑えて、野手が打てば勝てる。3連覇は意識しないでやりたい。

 決勝を翌日に控えた準決勝で、抑え起用が中心だったエース松本が先発完投したのには理由があった。「名プロデューサー」の異名を持つ関口清治監督(41)は優勝を逆算した台本を用意していた。花巻南(3回戦)と盛岡商(準々決勝)にサヨナラ勝ちした試合はともに9回に松本が失点。その裏に「盛付(もりふ)劇場」を発動しての逆転勝ちだった。

 関口監督 松本が打たれたまま終わっている。決勝に行くなら、松本が良い雰囲気を残したまま行きたかった。長いイニング投げた方がノッてくるタイプ。今日の松本は良かった。

 松本も監督の起用に応えた。低めに制球された直球とスライダーがさえ渡り、打たれた安打は3本のみ。「この前は野手に迷惑をかけてしまっていた。今日は前より低く球が集まった。あと1試合、疲れは関係ない。行けるところまで行きたい」と自信を見せた。

 前回の花巻東との14年決勝は、兄の裕樹が投打に躍動し優勝した。入学当初はソフトバンクにドラフト1位で入団した偉大な兄と比較されて悩んだ時期もあった。「今は何も意識はしてない。兄貴は関係ないと思えるようになった」。兄と投手のタイプは違うが、負けん気は兄譲り。跳馬の名前はフェラーリのエンブレムから命名された。盛付のエースの系譜を継ぐ男が、音速で夏3連覇に導いてみせる。【高橋洋平】