第100回全国高校野球選手権記念大会で2勝を挙げた金足農(秋田)が今日17日、横浜(南神奈川)との3回戦に臨む。2戦連続完投の最速150キロ右腕・吉田輝星(3年)は16日、大阪・豊中市内で行われた最終調整でブルペン入りし、約60球投げ込んだ。東北勢は08年から10年連続で準々決勝に進出しており、みちのく最後のとりでとして、初回からギア全開宣言。あえて封印していた新変化球を解禁し、名門をぶった斬る。

 相手が強ければ、強いほど燃えるのが吉田という男だ。前日15日をノースローで過ごし、この日は一転してブルペンで変化球を中心に約60球を投げ込んだ。9人野球の公立農業校が、春夏5度の全国優勝を誇る名門私立の横浜と激突する究極の一戦を前に、最速150キロ右腕は闘志をたぎらせていた。

 「横浜は1、2回戦の相手とはレベルが違う。初回からギアをフルでいきたい。1巡目のイメージが大事になってくる。初回で植え付けておくと楽。ギア3でいきたい」

 ついに封印を解く。150キロの剛速球だけが吉田の武器じゃない。カーブ、スライダー、カットボール、ツーシーム、チェンジアップ、スプリット。計6種類の変化球を自在に操る。甲子園ではカウントを取るツーシーム、120キロ台のカットボールを多投。横浜戦では今まで封印してきた縦に落ちるスライダーと、沈むスプリットを解禁する。

 「今までは、使わなくても抑えられた。本当に強いチーム用に残していた。直球を狙ってくる。違う球種を投げれば焦ると思う」

 警戒すべきは横浜の4番万波中正外野手(3年)だ。VTRを繰り返し見ており、対策は万全。今大会は9打数無安打と沈黙しているが「打って一番盛り上がるのは万波。横浜も本人も盛り上がる」と意識した。

 みちのく唯一の生き残りとして、最後のとりでとなる。08年から東北勢は10年連続で準々決勝に進出中だ。「やっと東北の分まで背負って投げられる。そういうプレッシャーがある方が、いい投球ができる」。背負うものが大きいほど、躍動できる。今大会唯一の農業校としてのプライドに加え、東北6県代表としての意地を胸に、甲子園のマウンドに立つ。【高橋洋平】