日本高野連は14日、第91回選抜高校野球大会の「21世紀枠」の各地区候補9校を発表し、九州地区は秋季九州大会8強の県立熊本西が選ばれた。

11月に部員が不慮の事故で亡くなったばかりの同校。精神的に不安を抱える部員もおり、候補辞退の可能性もあったが、故人の母のセンバツ出場の願いも胸に前進を続ける。21世紀枠の3校は、一般選考の29校(神宮大会枠を含む)とともに、来年1月25日の選考委員会で決まる。

熊本西部員は練習後、横手文彦監督(42)から吉報を伝えられた。地域住民やOBからバックネット裏に故人への花が供えられた野球グラウンドで、横手監督は「不慮の事故で亡くなった仲間と一緒に、これを励みにしてチームは前へ進んでいきます」と思いを込めた。

11月の練習試合中、2年生外野手が後頭部死球を受けて、外傷性くも膜下出血で亡くなった。学校関係者によると「生徒は立ち直っている途中だが、中には(精神的に)不安定な子もいる」状況だという。実際、県教育委員会から派遣された心理カウンセラーと面談した部員もいる。野球に対する恐れもあり、いまだ練習はフルメニューを消化できていない。だが横手監督は事故から1週間後の再始動前、選手に「(21世紀枠の推薦を)受ける覚悟はあるか」と問い、1週間に3回の選手間ミーティングを課すなど自身を見つめ直させた。

21世紀枠候補の辞退の可能性もあった。だが、亡くなった球児の母親から「推薦を辞退せず前を向いてください」とお願いされたという。センバツ出場がかなえば、故人の写真とユニホームも一緒に甲子園に連れていく。【菊川光一】