昨年11月に就任した学法石川・佐々木順一朗監督(59)が、初の公式戦を白星で飾った。

先発の横山凌投手(3年)が5回を無安打1四球10奪三振と好投するなど、10-0で石川を退けた。仙台育英(宮城)監督時代に春6回、夏13回の甲子園出場で通算29勝の名将が、新天地で再び甲子園出場を目指しスタートを切った。また白河は菊地翔外野手(3年)が本盗を決めるなど大暴れし、17-6で修明に7回コールド勝ちした。

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還暦を前にした百戦錬磨の名将も、この日ばかりは自然と気持ちがたかぶった。仙台育英時代の17年秋以来となる公式戦。佐々木監督は「子供が運動会で自分の順番が近づいてくる時の気持ちですかね」と笑った。

春季大会は直接甲子園につながらないとはいえ、初戦からすでに夏を想定していた。「地区予選とか関係なく、今から夏が始まったという気持ちでやりたかった。でも、それを言い過ぎて硬さを呼んだのかもしれない」。2回に先制するも、1点止まりの展開が続き6回まで3-0と均衡した試合となった。終わってみれば10-0とはいえ9回まで戦っての勝利。「どんな試合になっても、きれいに点を取ろうというのはいらない。泥の中でやっているようなつもりでいい」。思い通りにいかなかった初戦をプラスにとらえた。

就任時に選手にはっきりと言った。「何としてでも、どんな形でも、はいつくばってでも甲子園に行くぞ」。目標はあくまでも今夏だ。「再来年に行くよ、という感覚は分からない」。指揮官の本気度が伝わったかのように、エース横山凌は5回を無安打10奪三振の快投を見せた。「しっかり夏を戦うために、コントロールだけといった小手先にならないようにした」と1球1球に気持ちを込めた。桑山武冴志主将(3年)も「甲子園に対して本気のつもりでいたけど、監督の話を聞いて本気度が違っていたと感じた」と気持ちを新たにした。

学法石川は春夏12度の出場を誇るが、99年夏を最後に甲子園からは遠ざかる。学校、町の期待を肌で感じている。プレッシャーはもちろんある。佐々木監督は「不安だらけですよ。でも不安があるから油断せず、準備を怠らず、全力でいくわけですから」と話した。夏は聖光学院が12連覇中と1強状態が続いている。「宮城とは違って、福島はそれが面白いんですよ」。穏やかながらどこか不敵な笑みに自信が漂っていた。【野上伸悟】