桐蔭学園のプロ注目遊撃手・森敬斗主将(3年)はごまかさない。20年ぶりの夏優勝へ初戦突破しても、どこか表情がさえない。

「調子が悪いんです。だから力んでしまう。体が切れていないのもあります」と首をかしげた。

調子のピークを大会中盤~終盤に持っていくように調整するのが、強豪校の常だ。とはいえ、確かに100%の躍動感ではなかった。初回の打席は遊ゴロ併殺。守備では遊ゴロを待って捕り、内野安打にさせてしまう「らしくない」シーンもあった。「もう少し1歩目の速さ、キレを意識しないといけない」と反省する。

流れは悪く、第2打席は頭部死球に。第3打席前にヘルメットをかぶろうとしたら、目を見開いた。「ヘルメットの上のほう、割れていたんですよ」。寮で同部屋の木本圭一内野手(1年)が、先頭打者本塁打に、もう少しでサイクルヒットのデビュー。「今日は木本に救われた部分もあります」と後輩に感謝し、試合ではわき役に徹した。それでも2安打は放った。

ハイレベルな走攻守を備え、今春センバツでもNPBスカウト陣の注目を集めた。「小園や根尾に匹敵する素質を持っているかもしれない」と、昨秋ドラフト1位の高校生遊撃手たちの名を挙げて比較するスカウトもいるほどだ。この日も小雨の中で西武、オリックス、DeNAの3球団が視察。熱心に映像を撮影した。森自身は「考え中です」と、まだ希望進路を絞り切れていない。

U18高校日本代表1次候補にも選ばれており、思った以上に長い夏になる可能性もある。「まずは早くベストの調子に戻したいですね」。試合前も試合中も、必死に全身を動かす森の姿が目立った。【金子真仁】