<高校野球埼玉大会:花咲徳栄32-0杉戸農>◇12日◇2回戦◇市営大宮

憧れの人に勝利を届けられなかったが、晴れやかだった。杉戸農(埼玉)の矢吹武蔵捕手(3年)は、0-32で花咲徳栄に敗れ「プロ野球に行きそうな人とやれていい経験になりました」と振り返った。

西武のドラフト2位ルーキー渡辺勇太朗投手が少年団、羽生東中の先輩。矢吹はその少年団のコーチをしていた渡辺の父信次さんに憧れた。その後も交流は続き、4月に捕手に転向した際に相談するとキャッチャーミットを渡された。もらったミットで試合に臨み、教え通り声を出してチームを引っ張った。「お疲れさん。よくがんばったよ」と声をかけられると「ありがとうございました」と涙があふれ出てきた。

杉戸農に進学したのも、信次さんが造園業を営んでいることがきっかけだ。「勇太朗先輩のお父さんがかっこよかったから」。来春から京都に造園修業に行く予定だが、その前に信次さんから声をかけられた。「少し休んだら、うちにバイトしにこいよ」。この夏、一足早く修業が始まる。【佐藤成】