古豪、川越工が大躍進の8強入りだ。

完封リレーで接戦を制した。先陣を切ったのは左腕の真家弥広(やひろ)投手(2年)。4回まで3安打無失点でエース鈴木廉投手(3年)につないだ。鈴木は8回に連打で1死満塁のピンチを招いたが、力強い真っすぐで空を切らせ、スライダーで三振と一ゴロに打ち取って窮地を脱出。笑顔で最後までマウンドを守った。

73年には甲子園4強まで進んだ古豪。昨秋と今春は地区大会で敗退し、県大会にも出られなかった。熊沢光監督(60)は「できすぎ。大変なことです。ここという時に抑えてくれた」と目尻を下げた。守り勝てた裏にはエースの成長がある。

鈴木は「今までの僕だったら、満塁で確実に点を取られていたと思う」と話す。心身ともに鍛える目標になったのはあこがれの人、1学年上の日本ハム吉田輝星(18)。昨年3月、金足農(秋田)との練習試合で吉田輝がやってきた。「投げてくれたんですけど、みんな全然打てなくて。その時からすごいなって。球がキレるし、球速も速いし、立ち居振る舞いがカッコよくてフォームもきれい」とべたぼれ。まだ夏の“カナノウ旋風”前だった吉田輝の直球に、心を奪われた。

バテない体力とキレを求め、筋トレに励んだ。ダッシュなどのランメニューに加えてベンチプレス、デッドリフトに、10回×5セットの懸垂。家では消防士の父に、学校では日体大で学んだ教育実習生に、トレーニングの教えを請うた。効果は目に見えてきた。

上腕三頭筋の強化で腕の振りが速くなり、リストを鍛えたことでスナップがきいた。投球の初速からの減速幅が小さくなった。「球速は変わってないですけど、キレが上がりました」。直球で空振りが奪えるようになった。

ピンチでも動じず、無失点で追随を許さなかった。「ゼロで抑えられてよかった。春に悔しい思いをして、絶対負けられないと、強い気持ちでここまで勝ち上がれたと思います」。1戦ごとに目指すエース像へ近づき、5試合を突破。準々決勝は25日、山村学園とぶつかる。【鎌田良美】