星稜(石川)が県勢初制覇を逃した。ここまで大車輪の活躍をしてきた大会NO・1投手の奥川恭伸投手(3年)が先発したが、頂点には届かなかった。9回を投げ抜いたが被安打11の5失点。奪三振6。「2年半の集大成。持っているものを全て出して、最後は楽しみたいと思います」。センバツ1回戦で17奪三振、3安打完封している履正社に今度はリベンジを許した。

奥川が今夏放った輝きは忘れがたいものだった。壁をいくつも越えて、モンスターと化した。「完璧な投球などない。100点を出すのは一生不可能」と上だけを見据えてきた。

石川県かほく市の宇ノ気(うのけ)中で3年夏に全国制覇したが、星稜入学後の評価は「好投手」の域を出なかった。1年秋に故障したエースの代役で主戦を任されたが日本航空石川に県大会、北信越大会とも打たれ、計15失点。2年夏の甲子園では足をつって4回途中降板した。振り返れば苦い思い出が多い。

失敗を原動力にするのが奥川だ。思えば小4時の大阪遠征で強豪チームに2桁失点したのも、野球人生の転機だった。大阪のレベルを知り、目指す基準になった。おちゃらけた性格も一変した。今春センバツで大阪の履正社を抑え込んだ。

3回戦・智弁和歌山戦の延長14回1失点完投は歴史に残る名勝負だ。ドラフト1位確実、U18日本代表でもエース格になる北陸の怪腕。頂点は取れなかったが、かけがえのない仲間と過ごした一番長い夏は、高校野球ファンに絶大なインパクトを残した。