センバツ出場をかけた注目の「智弁対決」は、春に続いてまたも混沌(こんとん)とした展開になった。

記者席もこんがらがっていた。電話をかけるため一時退室していた記者が、スコアブックを再び書こうとしてペンが止まった。グラウンドを見ても、どちらの攻撃中かすぐには判別できない。しかも両軍の先発投手が同じような背格好の左腕だった。

ユニホームのデザインの違いは左袖だけ。本紙カメラマンは写真説明を書き込む際、選手名を間違えてはいけないとかなりの時間をかけていた。

佐藤薬品スタジアムの記者席は西日がきついことでも有名。真正面から日光を受けると球場全体がオレンジ色になり、まぶしてくて目も開けられない。いよいよ絶望感が出てくる。

7回表からは照明が点灯された。黒土に、赤白のユニホームが一層映える。甲子園の戦いを見ているようでワクワク感があった。

試合中、智弁学園・小坂将商監督(42)の2学年先輩にあたる野球部OBに聞いた。「智弁対決は特別な気持ちです。負けたくないプライドは奈良智弁の方が強いと思いますよ。世間は智弁=和歌山のイメージが強いから」。プライドを見事にグラウンドで体現しきった選手たち。やはり「智弁」は甲子園で見たくなるチームだ。【柏原誠】