消えた晴れ舞台を今、どう思う-。第92回選抜高校野球大会の開幕予定だった19日、21世紀枠に選出されていた帯広農の井村塁主将(2年)は、幕別町の自宅にいた。

「祖母から『本当なら開会式だったね』と言われ、あらためて変わったことを実感した。切り替えられたと思っていたが、吹っ切れていない自分がいた」と心境を口にした。

学校は現在も休校中で、練習も行っていない。同主将は自宅が農家のため、この日は午前中にビニールハウスで兄陸さん(19)とキャッチボール。午後は走り込みをして、体力維持に努めた。「感覚を忘れたくないし、この間に体を大きくしたい」。限られた環境で前向きに取り組んでいる。

ただ、喪失感をゼロにするのは難しい。「センバツを目指していたから、中止と聞いて、ぼうぜんとした。ここまでの練習は無駄にはならないが、できるなら1度甲子園でやりたかった」。練習再開日は未定。前田康晴監督(44)は「いざ春(季大会)に向け動きだしたとき、現実に戻されガクッと来るのではという不安もある」と懸念する。私立校は常識の範囲内で再開日を独自判断できるが、道立校は原則、道教委の指示次第。全部員とLINE(ライン)をつなぎ、状況を共有しながら、再始動できる日を待っている。【永野高輔】