「読書のススメ」が選手たちを成長させている。いなべ総合(三重)の尾崎英也監督(61)は、練習自粛が続く中、選手たちへ読書を薦めている。自粛前、それぞれの選手に合った本をプレゼント。また、この2年間のミーティングで渡した尾崎監督自作のプリントを1冊にまとめ、全員に渡した。これまでの練習内容、課題、大会での戦術から、試合の反省まで。著名人の言葉や論語や孟子なども書かれ、厚さは約3センチにも及ぶ力作だ。尾崎監督は「読書は語彙(ごい)力が上がり成長思考を生む。大人になれる」と期待を込める。

田所宗大主将(3年)に渡された本は川上哲治著「勝機は心眼にあり」。「何度も読み返し理解できた」と日常生活が野球の勝敗につながることを学んだ。尾崎監督のプリント本も、繰り返し読み深め、ポイントを絞り自主練習に取り組み、成果を感じている。田所主将は「これまでの試合の反省を、頭の中で何度もシミュレーションすることで、試合ができています」と実戦練習へ準備万全だ。

週に1度は、尾崎監督の動画がLINEで送信され、自主練習で緩みがちな気持ちを引き締める。この動画で、尾崎監督が何度も選手たちに語りかけた言葉は「ピンチをチャンスに」。いまだ終息が不透明で、4月27日には高校総体も中止となった。田所主将は「野球だけやっていいのか、という声もある。僕も最初はそう思っていました」と苦しい胸の内を明かす。そんな中、目標を失った他の部活の友達から次々と連絡が入り「野球だけはやって欲しい。応援に行くのを楽しみにしている」と勇気づけられた。「みんなの分も、頑張りたい」と夏の大会の開催を信じている。

読書、自主練習に脳内シミュレーション試合。時間を有効に使い心と体も成長する。今こそ「ピンチをチャンスに」変えるときだ。【保坂淑子】