タツノリが打った!

1点を追う東洋、最終回の攻撃。無死二塁で打席に向かったのは、巨人原辰徳監督と同じ名前を持つ4番鈴木辰徳遊撃手(2年)だった。岡本監督に「バントはないぞ」と背中を押され、「期待されている」と気持ちを高めた。だが、甘いストライクを見逃し、ボール球を振り、3球で追い込まれた。「2ストライクまでは1人で決めてやろうと思ってました。でも、次には3年生がいる。つなごうと」。最後は内角直球を引っ張り、三塁強襲の同点打。後続の安打でサヨナラホームを踏んだ。

父教純(のりよし)さん(48)が大の原監督ファンで、名前をもらった。自らも巨人ファンの鈴木は「初めて会った人にも『原さんから?』と聞かれます。野球をやっている身として、うれしいです」と気に入っている。昨年の原監督通算1000勝の試合は、親子で東京ドームで生観戦。「一生の思い出です」。原監督の現役時の映像を見ることも多い。特に印象に残っているのは、92年7月5日のヤクルト戦(神宮)。9回、内角攻めで尻もちをつかされた後、同点の1発を放った原が「見たか」と言わんばかりにバットを放り投げるシーンを見て「勝負強いなあ」と主砲のあるべき姿を学んだ。

この日は0-1の3回にも中前打を放ち、一時同点の足がかりをつくった。9回は追い込まれてからの同点打。原監督のように勝負強さを発揮した。劇的サヨナラ勝利で夏の幕を開けた。「このままの勢いでいきたい」と力強く、原監督のようにグータッチのポーズで誓った。

ちなみに、好きな選手は亀井善行外野手(37)だという。「数字以上に打っている人。勝負強い」と憧れる。通算1000安打を達成した9日の阪神戦は、もちろんテレビ観戦した。【古川真弥】