札幌第一が特別な夏の頂点に立った。9日、南北海道大会決勝で昨夏南大会準優勝の札幌国際情報を8-3で下し、夏は12年南大会以来の王者に輝いた。新型コロナウイルスの影響で甲子園が中止。憧れの舞台がなくなり一時は方向性を見失ったが、独自大会に向けエース兼主将の山田翔太(3年)を中心に結束。負けることなく最後の夏を締めくくった。北北海道大会は10日に準決勝が行われる。

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札幌第一の4番西正が、貴重な1発で勝利を引き寄せた。3点リードの8回2死一、三塁、右中間に豪快な3ランをたたき込み、一気に突き放した。前日の準決勝、札幌大谷戦は3打数で内野安打1本のみ。公式戦3号、通算14本目の本塁打に「4番としてふがいなかったことが、逆にバネになった。最後に1本打てて良かった」と喜んだ。

2年春のセンバツはチームに同行し、ボールボーイとして甲子園に立った。初戦で山梨学院に5-24で大敗するのを、間近で目に焼き付けた。「チームが大敗して悔しいという思いと、ここで頑張れば、自分にチャンスが来るという思いもあった」。本来投手だったが心機一転、野手に転向し、2年春の地区大会で初の背番号を手にした。

だが、道は平坦ではなかった。昨夏の南大会準々決勝、駒大苫小牧戦では、先発予定だった先輩の大坪蓮弥一塁手(早大1年)が体調不良となり急きょ、先発出場も2打数無安打1三振で途中交代。穴を埋めることができなかった。秋季地区予選の札幌国際情報戦も、4回のチャンスで凡退し敗戦。苦しみ抜いた末に頂点に立ち「みんなで誓い合った南大会の1番になれた。うれしい」と目を細めた。

エースで主将の山田を支える副主将。この日は2安打3打点と気を吐き「菊池監督にはいつも『山田をしっかりサポートしなきゃ駄目じゃないか』と厳しく言われてきた。最後に監督を笑顔にすることができた」。“しかられ役”が、勝負どころで、恩返しの1発を贈った。【永野高輔】

▽札幌第一・菊池雄人監督(48)「当たり前のことが当たり前じゃない年だった。最後笑って終わろうと言ってきた中で、選手はよくやってくれた」