創部34年目で甲子園初出場に大前進した。柴田(宮城3位)が6-0で日大山形(山形1位)を退け、春を含め初の東北大会決勝に進出した。

初戦から4戦連続先発のエース右腕・谷木(やぎ)亮太(2年)が120球で6安打無四球、8奪三振で完封した。今大会はほぼ1人で計35回1/3を投げ、5日間で計481球。「1週間内に500球を超えない」規定により決勝は投球制限を受けても、センバツ選考の重要度が高い「天王山」に全精力を注いだ。連覇を狙う仙台育英(宮城1位)は花巻東(岩手3位)に1-0で競り勝ち。20日の決勝(午前10時開始)は、開催地の宮城勢対決となった。

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柴田の鉄腕・谷木が一世一代の快投を演じた。山形王者を相手に5回2死まで完全投球。5回2死、9回1死から連打を浴びても慌てず、最終回まで「0」を並べた。最後の打者を空振り三振で締めると、淡々と投げ続けてきた表情を少しだけ崩した。「力まずにアウトを1個ずつ取る意識だった。勝てて良かった」。前日17日、東日本国際大昌平(福島1位)との準々決勝は8回1/3を投げ、12安打5失点。「野手に援護してもらった。今日は『自分がやるぞ』っていう気持ちだった」。エースの自覚たっぷりの120球で勝利を呼び込んだ。

生命線は抜群の制球力だ。追い込んでから、低めに沈むチェンジアップがさえ渡った。先頭打者の出塁は7回裏しか許さず、四死球もなし。バックも3回までに4安打で6得点と援護し、無失策で助けた。谷木は「カウント不利でも、低めにしっかりコントロールして、打たせて取れた」と納得の表情。日頃からリリースポイントの位置を入念に確認。常に「低め、低め」を心がけている。

スタンドで見守る家族にも最高の投球を届けた。父とのキャッチボールは小1から続く日課。最近は覚えたての変化球も受けてもらってきた。球速やキレが増し、父の左手は真っ赤に。次第に“女房”役を務められなくなりそうな現実に、寂しさと急成長の喜びが入り交じる複雑な親心も感じながら右腕を振り続ける。

夢見た東北頂点まであと1勝。決勝舞台では秋東北連覇を狙う、県内公式戦でも37連勝中の絶対王者が待つ。今秋の県準決勝は2-12の6回コールドで完敗。谷木は投球規定で球数は19球に限られるが、「やってきたことを出して、自分たちの野球を貫きたい」。県1位を4連破し、自力で「センバツ当確」をともす。【佐藤究】

◆県3位校の決勝進出 秋季東北大会に各県3校出場となった96年以降では、県3位校の決勝進出は98年東北(宮城)、03年東海大山形、09年秋田商、15年青森山田に続いて柴田が5校目。秋田商と青森山田は優勝した。過去4校はいずれも翌春のセンバツに一般枠で選出されている。

◆秋季東北大会決勝の同県対決 5年ぶり9回目。9回中6度は開催県で実現と「地の利」を生かす。センバツ選考では一般枠が1校時代と、同2枠(記念大会を除く)が定着した75年以降も90年代まで準優勝校は6連続で選に漏れた。ただ00年(○東北2-0●仙台育英)、15年(○青森山田5-0●八戸学院光星)は準優勝校も翌春甲子園に出場。他地区をみても、同じく一般枠2校の北信越(5県)は07年以降だけで5度の同県決勝となったが、準優勝校もすべて選出されており、選考材料として地域性のウエートは薄まっている。