復権を目指す智弁和歌山がプロ注目のエース中西聖輝投手(3年)と徳丸天晴外野手(3年)の活躍で窮地を乗り越え、春4強に進んだ。田辺工に5回まで無安打無得点。6回に徳丸が左前に同点2点打を放ち、7回から救援した中西が火消しした。最速152キロ右腕で今秋ドラフト上位候補の市和歌山・小園健太投手(3年)も圧巻の投球で勝利に貢献。近大新宮、和歌山東が勝利して、夏の県大会シード権を獲得した。

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窮地で踏ん張れるからこそプロ注目の逸材だ。智弁和歌山の投打の柱が、窮地で躍動した。名門が甲子園出場なしの田辺工に大苦戦した。5回まで小出隼海投手(3年)のカーブを打ちあぐねて無安打無得点…。3点劣勢の窮状を打破したのは徳丸だ。6回、1点をかえして2死二、三塁。初球速球を強振し、ライナーで左前へ。同点の2点打で負の流れを断った。

高校通算42本塁打のスラッガーが燃えた。「前の打者(代打石平の適時打)が意地を見せてくれた。その後、続こうと」と振り返った。2打席凡退後、勝負どころで快音を発した。

主砲が打てば、エースが抑える。同点直後の7回から登板した中西は先頭をスライダーで見逃し三振。自己最速タイの144キロ速球に変化球を交え、9回2死まで無安打無失点。5奪三振の快投で勝機を広げた。「チームが少し苦しく点を取れない回が続いた。どうにかして自分が投球でリズムを持ってきたい」。序盤の劣勢を跳ね返し、逆転勝ちした。

昨秋は県大会、近畿大会で宿敵の市和歌山に連敗するなど、センバツ出場を逃した。甲子園での小園の快投を見た中西は「単純にスゴイなと思った」と振り返る。悔しさを力に変えて夏の頂点を狙う。中谷仁監督(41)は「苦しかったですが、勝てて良かった。(中西は)苦しい展開で点をやらず攻撃につなげてくれた」と評した。昨年12月にイチロー氏(47=マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)の指導も仰いだ。夏県大会のシード権を得て、逆襲への足掛かりを築いた。【酒井俊作】

 

○…智弁和歌山の中西&徳丸を日米8球団のスカウトが視察した。阪神渡辺スカウトは中西を「球速も出ている。変化球もうまい投球をできている」と評価。ヤクルト阿部スカウトも「器用に投げる。高低を含めて制球がいい」と話せば、ロイヤルズ大屋博行国際スカウトも「変化球の質が高い。あれだけ変化球を投げられて(速球は)140キロ台を維持している。(徳丸は)あれだけ恵まれた体がある。飛ばせる」と評した。

 

○…甲子園を3度制覇して最多の通算68勝を誇る高嶋仁名誉監督(74)の孫、高嶋奨哉内野手(3年)も攻守で貢献した。手堅い三塁守備でもり立て、8回2死満塁で小出のカーブをとらえて左前に2点打を放った。昨年1月に同監督は「甲子園に行きたくて智弁に来た。甲子園の土を踏んでほしい」とエールを送っていた。父茂雄さんも甲子園出場しており、3代甲子園を狙う。