巻き返しの夏にする! 第103回全国高校野球選手権青森大会が13日から開幕する。「白球にかける夏 2021」第3回は、昨夏の県独自大会4強の弘前東を特集する。昨夏ベンチ入りメンバー3年生を中心に「2年連続県4強」を目標に掲げた。昨秋は地区予選で敗退。春は県大会2回戦止まり。投打の軸となるエース右腕・山谷謙之信投手、主将の崎野元汰捕手(ともに3年)は雪辱を胸に、最後の夏に挑む。

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雪辱を果たす夏、弘前東ナインがチーム一丸で立ち上がる。校内のグラウンドには快音が響き渡っていた。青森大会まで2週間を切ったこの日、打撃投手を務める控え組の投球には力がこもっていた。主力組は一振りでその思いに応える。「ありがとう」。サポート役に回る仲間への感謝の気持ちは決して忘れない。崎野主将は「メンバーに入れない3年生もいる。主将としてコミュニケーションは大事にしている」と、気遣いと心配りを怠らない。最後は3年生全員で有終の美を飾る。

ラストチャンスにすべてをぶつける。昨夏の県独自大会は過去最高に並ぶ4強入り。だが、3年生が抜けた新チーム初の公式戦となった昨秋は、まさかの地区予選敗退。6季連続の東北大会出場は途絶え、長い冬を過ごした。今冬はウエートトレーニングに加え、走り込みにも力を入れた。長靴に履き替え“雪中トレ”を行い、心身ともにスケールアップ。1番打者を務めるエース右腕山谷は「体を追い込んだ。膝上まで(雪が)積もっていた日もあった。足腰が強くなって球に強さが出てきた。投打で100%の力を出し切りたい」と手応えを実感、最後の夏で結実させる。

崎野主将は「扇の要」の捕手を務める。2年冬に葛西徳一監督(35)から選手全員に配布された、故野村克也氏の著書「野村ノート」を何度も読み返し、野球脳を磨いた。崎野主将は「打者はタイプAからD型に分類されていて、対戦する打者のタイプであったり、カウントや状況による考え方を学んだ」。試合中は相手ベンチにまで目を光らせる。さらに、谷繁元信氏(元中日、日刊スポーツ評論家)解説の著書「配球問題集」をリュックに常備するほどで、移動中のバスで必ず読んでいる。

チーム目標は「2年連続県4強」を掲げる。初戦は14日、大間と対戦する。勝てば2回戦で第4シードの八戸工大二が待ち受ける。崎野主将は「昨秋、春と悔しい思いをしてきたので、負けたくない。チーム一丸で戦っていく」と決意をにじませた。泣いても笑っても最後の大会。苦楽をともにした仲間と一緒に、長い夏を過ごす。【佐藤究】

<工藤嵐士、憧れ先輩蛯名超える>

工藤嵐士内野手(3年)は憧れの先輩超えを誓った。昨夏の県独自大会では、背番号13でベンチ入り。全5試合中4試合でスタメン出場した。準決勝の八戸学院光星戦。二塁の守備位置で挟殺プレーを判断ミス。チームも4-6で競り負け、試合後は悔し涙を流した。「練習中から1つ1つのプレーを大事にしてきた」と敗戦を糧に一回り成長。二遊間を組んでいた蛯名温人内野手(18=青森中央学院大)は、尊敬する先輩の1人で「ずっとライバルでもあり、憧れの存在だった。難しい打球でもさばくし、視野が広かった。夏は、ベスト4以上で昨年の結果を超えたい」。最終学年となった今夏は1年生の工藤楓士内野手と二遊間を組む。名字も同じで、名前も似ているが兄弟ではない。工藤嵐は「会話をして、自分が引っ張っていく」と頼もしく言い放った。