7年ぶりの味は格別だった。新宿が16安打を重ね、富士を圧倒。6回コールド勝ちした。14年以来の夏勝利と知った田久保裕之監督(39)は「そんなに勝ってなかったですか。過去は意識せず、彼らに勝ちを味わわせたいと思ってました」と言いながらも、感慨深げだった。

大先輩の教えが生きている。OBで元中日、現在は東大監督の井手峻氏(77)が19年秋まで指導に来てくれていた。学んだことを問われた田久保監督は「守りですね。今の東大の野球がそう。『守りを大事に、しっかりしなさい』と言われました」と振り返った。教えの通り、無失策で戦った。井手監督率いる東大は今春、東京6大学リーグ戦の連敗を64で止めた。その後に行われた最初の公式戦で、今度は新宿が7年ぶりに勝利した。

今の3年生は、井手氏の教えを受けた最後の世代。大村圭吾主将(3年)は「井手さんからは『積極的に』と言われてました」。教えを守り、各打者が積極的に振った。大村も2安打を重ねた。

田久保監督は「(井手氏に)今日の野球を見せたかったですね。あとは、うちの選手が東大に行ってくれたら」と笑った。進路希望を聞かれた大村は「学力が及ばないので…」と照れながらも、「大学野球に触れたい」。その前に、もちろん目指す場所がある。「気を抜かずに、目の前の1戦1戦が甲子園に通じると思ってやりたい」と元気よく締めくくった。