イチローさん、ちゃんとやりました!! 智弁和歌山が16安打9得点の猛攻で智弁学園(奈良)に圧勝し、21年ぶり3度目の優勝を果たした。

不戦勝の初戦を除いて全4試合で2ケタ安打を放ち、史上初の兄弟校による夏の決勝を制した。昨年12月にマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(47)から指導を受けたナインは「ちゃんとやってよ」の言葉に日本一で応えた。

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跳びはねる智弁和歌山ナインが西日で輝いた。エース中西が空振り三振で日本一を引き寄せると歓喜のダッシュ。胴上げはない。すぐに整列へ。兄弟校・智弁学園との「智弁対決」を制してもライバルに敬意を表した。優勝の主将インタビューで宮坂が言った。

「『礼に始まり、礼に終わる』ということで、礼で終わってから、全員で喜ぼうと話していました」

試合開始のサイレンが猛攻の合図だった。相手のエース西村の出ばなをくじいたのは1番宮坂だ。初球の真ん中スライダーを捉えて中越え二塁打。続く大仲も浮いたスライダーを痛打して一、三塁。徳丸の中犠飛と連続適時打で、初回に一挙4点を奪った。優位でも気を緩めない。5回終了時、ベンチで声が飛んだ。「このメンバーでやれるのもあと4回やぞ」。6回から5点を奪い、圧勝した。

合言葉があった。「ちゃんとやってよ」。昨年12月に指導を受けたイチロー氏から授かったひと言だ。冬の3日間は宝物だ。今大会前も「ちゃんと見てるよ」とメッセージが届いた。中谷監督も「1つ1つの行動に対して、どこを切り抜かれても自信を持って発言できる行動をしよう」と選手に言い聞かせた。7月27日の和歌山大会決勝はイチロー氏仕込みの走塁で貴重な追加点を挙げた。大一番でも助言が生きた。

「プレッシャーがかかる中で結果を出すことで自信につながる」

1回に適時打の高嶋が「初戦で安打を打てたことで自分の自信につながった」とうなずく。2安打1打点の宮坂主将は「個々で技術指導をいただいた。感謝の気持ちが強い」と言う。渡部は9回に本塁打。「打ちにいくとき、後ろに残ってしまう。『足を上げて前に入っていく』と教えていただいた。実践できてよかった」と感謝しきりだった。

初戦は宮崎商のコロナ禍による出場辞退で不戦勝。長雨にたたられて約1カ月の実戦ブランクはあったが4試合連続2桁安打。4戦連続の先制で、今大会は1度もリードを許さなかった。

中谷監督は言う。「サポートしてくださった、たくさんの方、全員に『ちゃんとやりました』と報告したい」。甲子園通算69勝目で21年ぶりの頂点。名門の底力が光った。【酒井俊作】

◆智弁和歌山が夏3度目V 夏の3度優勝は龍谷大平安に並ぶ歴代6位タイ(最多は中京大中京の7度)。春夏通算4度Vは歴代9位タイとなり、和歌山県勢では最多回数の箕島(春3、夏1)に並んだ。

◆近畿勢3連覇 18年大阪桐蔭、19年履正社に次ぎ(昨年は中止)、近畿勢が3大会連続V。近畿勢の3連覇は85年PL学園、86年天理、87年PL学園以来。日大三が制した11年以降の10大会は、関東勢と近畿勢が5度ずつ優勝している。

◆都道府県別V回数 和歌山県勢の夏優勝は00年智弁和歌山以来8度目。夏の8度は都道府県別で愛知県に並ぶ歴代2位。春夏通算13度は歴代4位の兵庫県に並んだ。

<公式戦での智弁対決(2勝2敗)>

◆95年秋季近畿大会・準々決勝(奈良市鴻ノ池)

智弁和歌山5-0智弁学園

◆02年全国高校野球選手権・3回戦(甲子園)

智弁和歌山7-3智弁学園

◆19年春季近畿大会・1回戦(佐藤薬品スタジアム)

智弁学園9-7智弁和歌山

◆19年秋季近畿大会・準々決勝(佐藤薬品スタジアム)

智弁学園17-13智弁和歌山

 

▽中日岡田(母校・智弁和歌山の優勝に) 優勝おめでとうございます。姉妹校で甲子園決勝戦をできることはうれしく思います。このような状況で色々なことがあり、出場辞退したチームがある中、この甲子園大会を開催してくれた関係者の皆様に感謝し、今後の人生に生かしてもらいたいです。

▽楽天黒川(智弁和歌山19年度卒。5季連続で甲子園出場)智弁対決でも、はっきりと見分けがついていましたし、和歌山をしっかり応援していました。高嶋先生の下で1年半、中谷監督の下で1年やらさせていただき、自分の財産になっていますし、智弁で野球ができたことを誇りに思います。自分も後輩たちに負けないよう“智弁魂”で頑張ります。

▽広島林(19年卒業) おめでとうございます。コロナ禍や天候の影響がある中で、本当に大変だったと思いますが、後輩たちの戦う姿勢、全力プレーを見て、僕自身もすごく刺激をもらいました。