今年も「運命の1日」がやってくる。プロ野球ドラフト会議が11日、都内で開かれる。日刊スポーツ東北版では東北のドラフト候補を紹介。「ドラフト候補に聞く」第1回は、八戸工大一(青森)黒田将矢投手(3年)です。「むつの剛腕」が偉大なOBに続く。青森・むつ市出身の最速149キロ右腕は、昨秋にロッテ種市篤暉投手(23)らがつけた背番号「1」を継承。最終学年の今春は県準優勝、同夏は県4強にチームを導いた。188センチ、78キロの恵まれた体格で、入学当初から球速を26キロも更新。未完の大器がプロへの思いを語った。

黒田は憧れの舞台への扉が開く瞬間を待ち望んでいる。「小さい頃からプロ野球選手になりたかった。甲子園に出場することはできなかったですけど、夢をかなえたいと思いました」。9月上旬、プロ野球志望届を提出した。

下北半島で生まれた野球少年は、八戸で開花した。高校進学は「プロで活躍されて、東北屈指と呼ばれていた先輩もいました。そういう先輩方が育った環境で自分も野球をやってみたいと思いました」と、八戸工大一に即決。地元を離れて伝統校の門をたたいた。2年秋に伝統の背番号「1」を託され「名選手がつけた番号で、プレッシャーよりワクワクしました」と気持ちを奮い立たせた。

昨秋は、21世紀枠でセンバツに出場した八戸西に県準々決勝で敗戦。苦い経験を経てチームを引っ張るエースとしての気持ちが変化した。「甲子園出場と同時に、本気でプロを目指す意識で取り組めば、みんなに刺激を与えられると思いながら練習に取り組んでいました」。力強い真っすぐを目指し、秋から春にかけて長距離、短距離走で日々下半身を強化。すると、入学当初は最速123キロだった直球の球速が、今春には149キロまで上がった。さらに、磨きあげたフォークで投球の幅を広げ、チームを上位進出に導いた。

急成長の裏には2人のOBからの刺激があった。ロッテ種市からは1年時にフォークの握りを伝授され、法大・古屋敷匠真投手(4年)は、キャッチボールの相手をしてくれた。古屋敷もプロ注目のドラフト候補。最速154キロ右腕と同日指名の可能性もあり、黒田は「偉大な先輩とドラフト会議を迎えられることはすごくうれしいです。2人でプロにいけたらいいなと思っています」と胸を躍らせている。

ドラフト会議当日は会見場に両親も駆けつける予定だ。「今も緊張した日々を過ごしています。指名されたら、学校にも勇気や勢いを与えられると思いますので、自分1人の問題ではなく、野球部として、工大一高として臨んで、良い報告ができるように気持ちの準備をして臨みたいです」。気持ちを冷静に保ち、あとは指名の瞬間を待つだけだ。【相沢孔志】

◆黒田将矢(くろだ・まさや)2004年(平16)1月24日生まれ、青森・むつ市出身。小学4年時に大平マリナーズで野球を始める。大平中では軟式野球部。八戸工大一では1年秋からベンチ入り。2年秋に背番号「1」を背負い、3年春は県準優勝、同夏は県4強。188センチ、78キロ。右投げ右打ち。家族は両親。座右の銘は「夢は力なり」。