市船橋(千葉)の“おかわり君”黒川裕梧内野手(3年)が、大舞台で人生初のサヨナラ勝ちを決めた。「自分が打席に立つ前に、(監督の)海上先生からチャンスでいくぞと言われていて、自分が決めようというつもりで立ちました」。

5-5で迎えた9回1死満塁、海上雄大監督(40)が「秘密兵器」と明かす、とっておきの代打として送られた。

スタンドから「市船soul」が流れる中、2球連続でスライダーを空振り。カウント0-2といきなり追い込まれた。焦ってベンチを見ると、みんな笑っていた。「大丈夫、大丈夫!」の声に、一気に気持ちがラクになった。

一塁上から見ていた片野優羽捕手(3年)は「コイツなにやってんだろうと思ったんですけど、黒川なら絶対に何かやってくれると思った」。ベンチから見守った宮栄太朗主将(3年)「(空振りは)自分の中では想定内。コイツはなんかしてくれるだろうなと思っていた」。チームメートもみんな、信じていた。

右翼から2番手でマウンドに上がった興南・安座間竜玖(りく)外野手(3年)が投じたスライダーはすっぽ抜けて内角へ。避けようとねじった黒川の背中に当たり、押し出しの死球が決勝点。「痛みは感じなくて、とにかく勝てたのでうれしかったです」と振り返った。

好きな言葉が「おかわり」。その理由は「初めて覚えた言葉だから」という177センチ、93キロの恵まれた体格で、ベンチからいつも声を出している。自分の長所は「元気では、誰にも負けたくないなと思ってやっています」。“持っている男”が、ミラクル逆転劇を引き寄せた。

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