強烈な爪痕を残し「旭川大高」最後の夏を終えた。第104回全校高校野球選手権(甲子園)で、3年ぶり10度目出場の北北海道代表・旭川大高は昨秋の明治神宮大会から3季連続の全国優勝を狙う大阪桐蔭(大阪)に3-6で敗れた。今夏大阪大会で1度も先制点を奪われていない相手から先に得点を挙げ、地区大会7戦1失点の強力な投手陣から3回までに3点をたたき出したが、逆転負けを喫した。93年以来29年ぶりの1勝には届かなかったが、優勝候補相手に堂々と渡り合った。

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大喝采を巻き起こした。旭川大高は3-6の9回2死一塁から主将の広川が左前打、続く藤田が一塁へのゴロでヘッドスライディングしてセーフに。2死満塁のチャンスをつくると、1万7000人の大観衆から大きな拍手が沸き起こった。最後は4番鶴羽が三塁ゴロに倒れ敗れたが、主将の広川は「負ける気持ちは一切捨てて臨んだ。甲子園で勝つという目標は達成できなかったが、最高のプレーができた」。難敵相手に10安打3得点。北北海道代表の意地を見せた。

最強チームに真っ向勝負を挑んだ。1回先頭の近藤がいきなり三塁線にバント安打を決めて出塁すると早速、観衆がどよめいた。1死一、三塁とチャンスを広げ4番鶴羽の3球目に一塁走者藤田が一、二塁間で挟まれるも、三塁走者の近藤も本塁を狙うしぐさを見せ相手を引きつけ、藤田が二盗に成功。完全に自分たちのリズムで試合を進め、山保の中犠飛で先制点をたたき出した。

今夏、大阪桐蔭から先制点を奪ったのは旭川大高が初めて。山保は「どれだけ世間が大阪桐蔭が勝つと思っていても、やってきたことを信じてやれば強い相手でも、いい試合ができることを伝えられた」。3回無死1塁では、藤田がプロ注目の川原から右翼スタンドへ2ラン。浜風の影響で難しい右方向へは今夏初の1発。大阪大会7戦1失点の相手から3点もぎ取った。

3日の抽選会直後、山保は「大阪桐蔭の相手に決まったという会場の雰囲気にのまれていた」。翌4日の練習前、端場雅治監督(51)は選手たちに伝えた。「ここまでやってきた最大限を出そう。100%を出そう」。できないことをやる必要はない。やれることを精いっぱい出せば光は見える。指揮官の力強いメッセージに山保は「絶対に勝ってやるんだという気持ちになれた」と感謝した。

「旭川大高」としてのラストサマー。勝利を手にすることはできなかったが広川は「名前は変わっても、旭川大高の伝統は受け継がれていく」。1時間58分。大きな壁に挑んだ最後の3年生の激闘が、新たな伝統のプロローグになる。【永野高輔】

○…藤田が1-0の3回無死一塁で大会7号となる右越え本塁打を放つなど、5打数4安打2打点と気を吐いた。「本塁打は内よりのストレート。球場に入ったときは広いなあと思ったが打った瞬間、スタンドが近いと感じた。完璧な当たり。最高の感触。ベンチに戻ったらどんちゃん騒ぎでした」。9回2死一塁では一塁へゴロを放ちヘッドスライディングで内野安打に。将来については「大学で続けて力をつけ、プロを目指したい」と思い描いた。

○…背番号1の池田が先発し6回0/3 4失点と粘投した。1回1死一塁で走者をけん制で刺すなど2回まで大阪桐蔭打線を無安打無失点。5回にバッテリエラーなどで2失点も、最速143キロのストレートにチェンジアップなどをまじえ、試合をつくった。「高めに浮いたら絶対に打たれる。低め勝負を意識した。点数を取られたとき、テンポを変えたりした。今までの投球で一番良かった。100点です」と振り返った。

▽池田、山保をリードした旭川大高・大渕捕手 2人とも低めに決まっていて真っすぐも変化球も良かった。リードを奪えたのでベンチの雰囲気も良かった。

◆北海道勢今年も勝利なし 北海道勢は17年以降、中止の20年を挟み5大会連続で代表2校が初戦敗退。北海道の5大会連続勝利なしは87~92年の6大会連続に次ぎ2度目。