強烈な爪痕を残し「旭川大高」最後の夏を終えた。第104回全校高校野球選手権(甲子園)で、3年ぶり10度目出場の北北海道代表・旭川大高は昨秋の明治神宮大会から3季連続の全国優勝を狙う大阪桐蔭(大阪)に3-6で敗れた。今夏大阪大会で1度も先制点を奪われていない相手から先に得点を挙げ、地区大会7戦1失点の強力な投手陣から3回までに3点をたたき出したが、逆転負けを喫した。93年以来29年ぶりの1勝には届かなかったが、優勝候補相手に堂々と渡り合った。

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就任30年目の端場雅治監督(51)が独特の指導で選手を鍛え上げ好ゲームを演出した。一時3点リードする展開に「野球は9回まで。集中を切らさないように伝えていた。いい流れで入れていたし、最後まで集中していた」と振り返った。

聖地でも端場イズムを貫いた。ピンチの場面でも伝令は送らず。理由は「大事なところはベンチから、ばーっと言えばいい。間合いとかって、その子によって違ったり、取りたくないところでタイム取られたりすると投手のリズムを崩してしまう」。円陣も組まなかった。「言いたいことがあれば先頭打者に言いたい。先頭打者は円陣に入らないから意味がないかなって。昔はやってたような気はしますけどね」。

練習方法も独特で、打撃マシンは使わない。「昔は使っていたが修理にお金がかかるんですよ。それなら生徒が投げた方が、ためになるのかなあと」。倉庫に1台あるが、最近使用したのは、捕手の捕球練習用だった。数年前から丸刈りもやめた。30年の間、柔軟に考え方を変え、球児の成長に一番大事なことが何なのかを、常に追求してきた。

監督として最初の甲子園は高知商・藤川球児、3年前は星稜・奥川恭伸に食い下がり、今回は優勝候補の大阪桐蔭と競り合った。聖地では難敵との対戦が多く0勝7敗。「勝負事ですから勝ちたかった。ミスが出たところに最大の敗因があった。詰めが甘かったなと」。旭川大高で果たせなかった聖地1勝は「旭川志峯(しほう)」で成し遂げる。【永野高輔】

○…旭川大高の山内亮史校長兼理事長(81)がスタンドから応援した。来春から旭川大が市立化することにともない学校法人から分離され、旭川大高は「学校法人・旭川志峯学院」の「旭川志峯高」に変更する方向。既に文部科学省に申請中で、順調に手続きが進めば9月には決定する。来春以降の野球部に関して同校長は「来年も同じ体制でいきます」と話しており、端場監督、山本博幸部長(42)が指導を継続する。

○…先制中犠飛を放った山保の父貴史さん(46)がスタンドから息子の奮闘を見届けた。行進を見るため6日の開会式にも訪れたが、コロナ禍の影響で急きょ主将だけの参加になったため「やっと甲子園に立つ姿が見られた」と喜んだ。帯広農野球部OBで、自身は3年夏の十勝地区3回戦敗退。「私の夢を果たしてくれて、感謝の気持ちしかありません」とうれしそうに話していた。

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