“投手王国”仙台育英(宮城)が、全国の頂点に立った。決勝は最速145キロ左腕、斎藤蓉投手(3年)が先発し7回1失点。8回からは高橋煌稀投手(2年)が下関国際(山口)打線を無失点に抑えた。

今大会、最速145キロ超えの投手5人を擁し、全5試合を継投で勝利。プロ野球並みの緻密なデータと綿密な計画で投手を育成。激しいチーム内競争から、最強の投手陣が生まれた。

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ベンチ外となったメンバーは、アルプスに一礼した仲間へ拳を突き上げた。決勝で先発した斎藤蓉は、肘のケガなどで宮城大会は登板なし。「自分にない良さが他の投手にあるので、それが一番の刺激。ベンチに入っていない投手にも感謝しています」と明かした。

最速140キロ超えの投手は10人以上。野手出身の須江監督は「育てることにすごくこだわりを持ってきた」と語る。医師や理学療法士、トレーナーを含めたメディカルチームで情報を共有し、計画的に育成する。

高校野球の令和版を全国に示した。練習試合の先発ローテーションは1カ月先まで決まっているプロ野球レベルで、連投はさせない。大会に入る際にも、事前に投手起用法を伝えるため、選手は試合に向けて計画的に準備できる。

練習は野手と完全に分け、徹底的に自主性を重んじる。選手の中に「投手コーチ」を置き、中心となって練習メニューを組む。大枠は決めるが、内容は選手がそれぞれ選べる。ブルペンに入るのも自分で調整し、捕手に「明日、捕ってくれない?」と連絡。選手がお互いのブルペン投球の動画を見てアドバイスを送る。

緻密なデータ野球が、投手王国を築き上げた。定期的に球速を計測し、PDFにまとめて共有。時期を区切ることで、球速アップした選手はどのメニューが自分に合っているのかが分かる。試合ごとのストライク率、防御率、初球ストライク率、変化球ストライク率もチェックする。

入学時から、球速が約20キロアップする選手もいる。その陰には、OBのロッテ平沢が贈った、インナーマッスルを鍛えられるエクササイズ器具「レッドコード」が一役買っている。

今年の投手コーチを務めた渋谷翔投手(3年)は、スタンドから優勝を見守った。「日本一の投手陣だと自信を持っている。それを、証明してくれました」。高いレベルでの切磋琢磨(せっさたくま)が、日本一へつながる道となった。【保坂恭子】

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