作新学院(栃木)のアルプス席で、吹奏楽部が真っ赤なユニホームを甲子園で初めて披露した。

イニングの間に、吹奏楽部の生徒たちの様子をカメラにおさめる男性がいた。閉校になった石川県立珠洲実のブラスバンド部で顧問をしていた喜多忠男さん(78)。「感無量です」とアルプス席を見つめた。

珠洲実のブラスバンド部は全国大会に出場し、受賞歴がある名門だった。1987年には、地元「能登青少年吹奏楽団」の一員として、米国カリフォルニアで行われる有名な「ローズ・パレード」に出場。その際、地元の方々からの寄付で作ったのが日の丸をイメージした赤をメインに使ったこのユニホームだった。代々、大事に使われてきたが、高校は10年に飯田との統合により閉校。ユニホーム80着は学校の一室に眠っていた。マーチングバンドの指導者を通じて、19年に宇都宮の作新学院に寄贈された。

作新学院吹奏楽部は、20年11月の定期演奏会で初めて着用。その際、ステージで喜多さんは「このユニホームを甲子園のアルプススタンドで、全国に披露してもらうのを楽しみしています」とあいさつ。それが、ついに実現した。

夏の甲子園は出場していたが、センバツは6年ぶり。ユニホームの生地が厚く、真夏は着られないためセンバツの舞台を待っていた。石川県から観戦に駆けつけた喜多さんは「ブラスバンド部の卒業生800人の代表で、見に来ました。ユニホームはテレビにも映っていると思うので、卒業生も喜んでくれていると思う」と話した。