元日本ハム投手の芝草宇宙監督(53)率いる帝京長岡が、加茂暁星に12-7で逆転勝ちし、春は初の優勝を手にした。夏秋を含めると初優勝した92年秋以来の県制覇だ。最大4点差を終盤にひっくり返して頂点に立った。4-7の8回は連続犠飛で2点を返すと、9回は5長短打に相手失策にも乗じて一挙6点を奪った。帝京長岡は6月3日に開幕する北信越大会(石川)に出場する。

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4点差で終盤を迎えても誰もが優勝への気持ちは捨てなかった。脅威の粘りで試合をひっくり返した。4-7で迎えた8回は無死から四球に2死球で無死満塁。5番・竹部新之助捕手(3年)が左犠飛、続く川瀬貫太中堅手(3年)も中犠飛で続き、この回無安打で1点差に迫る。9回は3長短打に1死球、さらに相手失策を誘い、3得点で9-7とリードを奪う。なお、1死二、三塁で右越えの2点二塁打を打った竹部は8、9回の終盤に3打点を荒稼ぎ。「1人1人がチームのために戦う姿勢を持っている」と殊勲者は言った。

芝草監督は目を潤ませ、時折、はなをすすりながら逆転優勝を振り返った。「チームのみんなに僕は感動させられた。素晴らしいのひと言。粘りを最後の最後に出せる。大会で成長したんだと思う」。最後の打者を左飛に打ち取り、優勝が決まるとナインはグラウンドで歓喜の輪を作った。閉会式後には芝草監督が、ナインにひと言かけながら金メダルを首にかけた。竹部は「自分たちは甲子園に初出場して新潟県の歴史を変えるということをスローガンにしている」と話した。

昨夏は準優勝も、秋は3回戦止まりだった。もちろん冬場の練習を厳しく積んできた。それぞれ個人の強化ポイントに合わせ、打撃、守備、体力強化など7、8班に班分けして練習。投手はプールトレーニングを取り入るなど工夫を凝らして強化した。そんな冬の強化策も功を奏し、この日、打線は16安打。大会6試合でのチーム打率は3割8分4厘だ。20年から指揮を執り、初の県制覇の芝草監督は「『甲子園で勝つ野球をやろう、甲子園で勝つ練習をやろう』とやってきた」と言う。その成果は6月の北信越大会を経た、今夏に出す。【涌井幹雄】