金光大阪は近江(滋賀)に逆転勝ちで、2回戦進出を決めた。キャリー・パトリック・波也斗投手(3年)が意地の9回167球、7安打6奪三振2失点の完投で勝利に導いた。

初回、先頭打者が打席に入ると一塁側スタンドから力強い「威風堂々」が響いた。金光大阪の吹奏楽部だ。

選手たちは日頃、吹奏楽部の練習する音を聞きながら汗を流す。キャリーは「感謝しながらプレーに入れた部分もあって少し楽になりました」と笑顔。吹奏楽部の練習を聞いているからこその励みだった。

普段の公式戦で演奏を聞く機会はほとんどない。大阪府高野連はすべての公式戦でブラスバンドや、いわゆる鳴り物の応援を禁じている。府内の使用会場のほとんどが住宅地に近いことが理由。周囲に住宅がないシティ信金スタジアムは演奏可能だが、公平を期すために全面禁止を続けている。ただし、近畿大会は別。舞洲が会場なら演奏可能だ。今回、スタンドに吹奏楽部が来場したのは近畿大会に出場した8校で唯一だ。

吹奏楽部の力も借りて、キャリーは厳しい展開を乗り切った。

2回以降毎回走者を出すピンチの連続。1点差に迫られた8回には左のスパイクが破れ、底が擦れて出血するアクシデントもあった。ベンチに下がり、テーピングを巻いてマウンドに戻った。9回の前には横井一裕監督(48)に「行きます!」と続投を志願。体力的にはしんどかったと言うが「後に投げる投手はすごく緊張すると思うので9回投げきりたかった」とエースの自覚を示した。

横井監督も「うまくいかない中で粘ってくれた。いい投球だった」とたたえた。

大阪府予選の決勝では大阪桐蔭を相手に1失点で完投し、春季初制覇に貢献。キャリーの快進撃は続く。【村松万里子】

 

◆キャリー・パトリック・波也斗(はやと)2005年(平17)9月15日生まれ、兵庫県尼崎市出身。小3から武庫之荘ボーイズで野球を始め、武庫中では宝塚ボーイズ。金光大阪では2年春の甲子園に外野のレギュラーとして出場し、8強入り。2年秋からエース。50メートル走5秒9、遠投90メートル。178センチ、81キロ。左投げ左打ち。両親と弟、妹2人。