高校通算140本塁打を誇るプロ注目スラッガー、佐々木麟太郎内野手(3年)を擁する花巻東(岩手)が、約4時間に及ぶ死闘を制した。試合時間は2時間22分ながら、大雨の影響で試合が1時間34分中断。試合再開後の8回、主将の千葉柚樹内野手(3年)が決勝打を放ち、クラーク(北北海道)に2-1で競り勝った。佐々木麟は4打数無安打も、進塁打で先制点と決勝点を演出。チームは8年ぶりに16強入りした。

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花巻東が生き残った。2-1の9回無死一塁。3番新岡を二ゴロ併殺に打ち取ると、一塁手の佐々木麟は右拳をぐっと握り、雄たけびを上げた。後続は右飛に抑えて試合終了。「本当にクラークさんは手ごわくて、自分たちも戦力を尽くして戦い抜いた。その中で落とさなかったのはすごく良かった」。初戦8日宇部鴻城(山口)戦は3打数3安打1打点。ノーステップ打法に変えたこの日は、4打数無安打だったが、2本の進塁打で得点につなげた。

突然の大雨で試合が止まった。同点の8回1死一、二塁。2番手小松が8番吉田にフルカウントとした午後4時1分、雨脚が強まり、1時間34分中断した。佐々木洋監督(48)は「間を制覇するものが勝つんだ」とナインに語りかけ、選手間でもミーティング。気持ちを切らさず、集中力を高めた。花巻東にとっては有意義な時間になった。

雨にぬれたユニホームを着替え、食べ物も口にして栄養補給。捕手小林は足がけいれんし、指揮官の頭には捕手経験のある右翼久慈の緊急起用もよぎったが、小林の足は中断中に回復したという。佐々木麟は「流れ的に良くなかったので、心も体もリセットできた」と振り返った。

中断明けに継投で大きな決断を下した。佐々木監督は「めちゃくちゃ迷いました。雨がなかったら代えられなかったのでは」と3番手の中屋敷にスイッチ。「(中屋敷は)ある程度のところにボールは投げられる。小松がハッキリとしたボールだったので、神頼みのようになった」。午後5時35分に試合再開。中屋敷の初球はわずかに外れ四球となり、1死満塁とピンチは拡大したが、後続2人を外野フライに封じた。

ピンチを脱したその裏、花巻東は佐々木麟の進塁打を起点に、5番千葉の決勝打が生まれた。「こうやって仲間が助けてくれて、勝つために命を懸けて、岩手県を背負って戦っていることにみんなにありがとうと伝えたい」と力を込めた。

16日の3回戦は智弁学園(奈良)との名門対決が実現する。「非常に苦しい中で勝ち上がったのはプラスになる。先を見ることなく一戦必勝で勝つことだけを考えたい」。花巻東の夏は、まだまだ終わらない。【山田愛斗】

◆94分間の中断経緯

午後2時6分 試合開始

同4時1分 突然の降雨により試合中断

同4時20分 約20人の阪神園芸スタッフが1度目の整備を開始

同4時35分 再び雨脚が強まり、マウンドとホームベースにシートを置く

同5時9分 約30人の阪神園芸スタッフが2度目の整備を開始

同5時33分 照明が点灯される

同5時35分 試合再開

同6時2分 試合終了

 

▽オリックス牧野スカウト(佐々木麟について)「安打は出なかったが、スイングスピードは群を抜いている。スイングの鋭さ、怖さがあった」