作新学院アルプスの一角に赤色が映えていた。吹奏楽部が着用していた真っ赤なユニホームだ。そこには能登半島地震の被災地の思いも込められていた。

緑のアルプススタンドに映える真っ赤なユニホーム。10年3月末で閉校した石川県の珠洲実から譲り受けたものだ。ユニホームの生地が厚く、真夏は着られないため、昨春センバツで初めて聖地で着用した。今年は違った思いも込められている。

1月1日に珠洲市も能登半島地震の激震を受けた。珠洲実のブラスバンド部で顧問をしていた喜多忠男さん(79)の自宅も震度6強の揺れに襲われ、全壊こそ免れたが「経験したことのない揺れ。家の中も、もうめちゃくちゃ」。ライフラインは途絶えて、水は約1カ月止まったままだった。余震で不安な日々が続く中で、この日のために前日から半日かけて石川県能登町から応援にかけつけた。

真っ赤なユニホームを着て、昨春に続き甲子園で演奏。「テレビでユニホームを見て、珠洲の人たちが元気を受けてくれれば本当にうれしい」としながらも「避難所にテレビがあるかどうか」と、苦しむ被災地の現状を思いやった。

作新学院吹奏楽部の演奏リーダーを務める栗田百逢(もあ)さん(3年)も被災地に思いを寄せる。昨年11月に定期演奏会で訪れた珠洲市が、震災後に見たテレビでは変わり果てた姿に。「苦しい思いをしているのに何もできない私たちの無力さを感じた。今回は石川県の被災された方々が少しでも元気になってもらえる演奏ができればと思っています。私たちが着ているユニホームの『ありがとう』という気持ちや『頑張って』という気持ちを伝えたい」。思いを込めてアルプスから作新学院の選手を後押ししている。