前年度準優勝の花巻東(岩手)が、京都外大西を延長9回タイブレークの末、1-0で破り、初戦突破を果たした。先発の千葉穂乃果投手(3年)が、9回3安打5奪三振の好投で完封勝利をマーク。9回1死二、三塁のチャンスに照沼涼音内野手(3年)が中前にサヨナラ適時打を放ち、チームに歓喜をもたらした。

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信じた結果の勝利だった。沼田尚志監督(64)は「千葉をどこで変えようか悩んでいたが、ここまで来たら最後までいかせようと思った」と勝負を託した。投手戦となった試合は延長タイブレークへ突入。だが、延長戦に強いチームは自信に満ちあふれていた。千葉は一球ごとに声を振り絞り、1点も許さない渾身(こんしん)の投球を披露。チームは指名打者制を採用しているため、千葉はベンチから仲間を信じ、打者を鼓舞した。「緊張していたが、周りが声をかけ続けてくれたので、気楽に投げられた」と感謝。全員でつかみ取った勝利だった。

千葉は中学では投手をしていたが、高校に入り、捕手に転向。持ち味の「肩の強さ」と「コントロール」を武器に、チームから信頼される扇の要へと成長した。だが、昨年の選抜大会準決勝、履正社戦(大阪、2○1)で、右膝に脱臼のような症状が現れた。その後も痛みはなかったが、突発的な症状に苦しみ、昨年8月ごろに投手へと再転向。中学以来のマウンドだったが、同月のユース大会で2試合に先発登板し、計10回で5安打9奪三振2失点の防御率1・80。投手復帰戦で好スタートを切った。そして一冬を越え、さらにたくましく成長。この試合の完封で防御率は0・95まで伸びた。

3回戦は25日に佐久長聖(長野)と対戦する。沼田監督は「初戦で締まったゲームができたので、もう緩みはない。自分たちがやってきたことを発揮できるように調整して臨みたい」と意気込んだ。昨年、成し遂げられなかった優勝。東京ドームの頂点からの景色を目指し、一枚岩になって突き進む。【木村有優】

○…息づまる投手戦に決着をつけたのは照沼だった。9回裏1死二、三塁のチャンス。アウトコース高めのストレートを強振すると打球は中前へ-。劇的なサヨナラ打にガッツポーズで喜びを表した照沼は「(相手の投手は)真っすぐと変化球がはっきりしていたので、真っすぐを狙っていた。千葉が好投する中で点数が取れず、申し訳なさを感じていたので、打てて良かった」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

▽佐々木秋羽(しゅう)主将(3年)「初戦はすごく大事なのでチームを引っ張れるよう、たくさん声を出した。自分の代となり、プレッシャーもあるが、気持ちで負けないようにしたい。次は兄(麟太郎内野手)からもらったアドバイスを生かして打てるようにしたい」