星稜(石川)が快勝し、初めて4強に入った。石川県勢としてもセンバツでは初の準決勝進出。能登半島地震で被害を受けた地元に、あと2勝で紫紺の優勝旗が届く。高崎健康福祉大高崎(群馬)は堅守で4強へ。山梨学院の春連覇はならなかった。関東勢では中央学院(千葉)も春夏通じて初のベスト4。大阪桐蔭を破った報徳学園(兵庫)は30日の準決勝に進んだ。

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試合ごとに2桁背番号の選手が躍動する星稜に、また新たなヒーローが生まれた。1回戦は20番東汰生(たいせい)外野手(3年)、2回戦は13番中島幹、そしてこの日は18番戸田慶星投手(2年)。公式戦初先発の2年生右腕が2安打完封で、県勢初の4強に導いた。

3回、先頭打者に初安打を許し、そこから1死二塁と得点圏に走者を背負った。だが連続内野ゴロでピンチを脱出。9回2死から2本目の安打を許すまでピンチらしいピンチもなく、堂々の完封勝利を挙げた。

登板前は「何も考えないようにして試合に入った」と無心を心がけた。女房役の能美とブルペン捕手の河上も作戦を練った。戸田の緊張しやすい性格を知る2人は、あえて「緊張しとけよ」と声をかけた。「緊張するもんだと思えと。緊張がダメと言えば、そっちにのめり込んで、意識が向いてしまう」という気づかいも功を奏した。

OBのヤクルト奥川の投球に心を奪われ、星稜中に入学。父岳仁(たけと)さん(52)の「星稜に入ってほしい」との願いで、慶星(けいた)の名前に「星」の字が入る。奥川がエースとしてけん引した当時の映像を、繰り返し見てきた。「小学校の頃は(甲子園で)投げられるとは思ってなかった」と、夢舞台に立つこと自体が夢心地だった。

冬場はウエートトレに励み、室内練習場に掲げられた「念ずれば花開く」の言葉を胸に刻んだ。戸田の志を知るエースの佐宗翼(3年)は「この冬で一番の成長。頼もしくて安心して見ていました」と明かした。

センバツ4強は星稜にとって5度目の正直。松井秀喜(元ヤンキース)、山本省吾(元オリックス)、奥川らも果たせなかった。「先輩を超えたとは…」と喜びがこみあげる。チームは昨秋から16連勝。「1球1球を大事にして、結果的に1点でも相手より多く取れるように」と春制覇に向かう。【中島麗】

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