<センバツ高校野球:中央学院5-2青森山田>◇28日◇準々決勝

センバツが100年を迎えた。敗れて甲子園を後にする敗者には、今夏の甲子園へとつながっていくドラマがある。「涙は夏のため~新しい夢のため~」と題し、さまざまな角度から敗れたチームの物語を紡ぐ。

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野球がつらかった、やめたかった-。青森山田・桜田朔投手(3年)は、青森山田リトルシニア時代に何度も「野球をやめたい」と思ったことがある。中学時代は青森山田中に自宅から通っており、毎日送り迎えをしていた父博さん(47)は「毎日、朔が苦しんでいる顔を見るのがつらかった」。片道36キロ、往復72キロの道のりで、曇った表情の息子が心配だった。周りとのレベル差や細い体-。桜田は「多分自信がなかったんですよね」と振り返る。

リトルシニアで日本一に輝き、高校日本一を目指して青森山田に入学。しかし、高校1年で右ひじのクリーニング手術をし、今度は野球ができず、投げやりな気持ちになり落ち込む日々が続いた。苦しい時期を過ごしたが、だからこそ弱い自分と向き合えた。努力が足りないと感じ「もう、やるしかない」と前を向けるようになった。

この日は中央学院を相手に4回途中5失点で降板。目に涙を浮かべ「自分のせい」と何度も口にしたが、夏に向けて「勝ちたいです」と力強く言った。悔しい春となったが、まだ次がある。再び立ち上がり、夏こそ笑顔で締めくくる。【濱本神威】