準々決勝で敗退の山梨学院は、河内佑樹外野手(3年)がチーム唯一の打点を挙げた。6点を追う8回無死満塁で中犠飛を運んだ。昨秋の関東大会で代打で公式戦デビューを果たし、今春に「3番・右翼」の定位置を獲得。初の聖地で堂々とプレーした。

勝負強さに加え、強運も備えている。「人よりもちょっと運が良いかなと思います」。実家は、山梨・韮崎市にある「永明院」で、曹洞宗の寺の息子。実は中学時代、野球継続の危機に直面した。

ボーイズチームでの練習時、送球が右目に直撃した。「痛すぎて目が開けられなくて。最初はずっと人が三重くらいに見えてて」。すぐさま病院へ向かうと、負傷箇所があと少し下だったら失明の可能性もあったという。手術はせず2週間安静にすると、1カ月で視力は回復。これ以降大きなケガなく、野球に打ち込めている。

もしかしたら当たり前にこなしている慣習が、強運の秘訣(ひけつ)なのかもしれない。寺の息子らしく「自分の家は年末年始が忙しいので。帰省の時はずっと掃除してます」と、仏像磨きに精を出している。「全力で集中力がもつまではやります。2時間くらい」。やるからには、とことんきれいにしたいタイプ。ここぞの集中力には自信がある。

甲子園では9打数3安打1打点。全3試合をスタメン出場し、憧れの場所でもひるまなかった。「平常心でいつも通りの野球ができたのはすごく良い経験になりました。また夏にここで試合がしたい」。

さらなる中心選手となって帰ってこれるように。再びこの場所に戻ることを誓った。【佐瀬百合子】