<センバツ高校野球:健大高崎5-4星稜>◇30日◇準決勝

センバツが100年を迎えた。敗れて甲子園を後にする敗者には、今夏の甲子園へとつながっていくドラマがある。「涙は夏のため~新しい夢のため~」と題し、さまざまな角度から敗れたチームの物語を紡ぐ。

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思わず涙があふれ出した。星稜の芦硲(あしさこ)主将は試合後、敗戦の悔しさをかみ殺し、報道陣への質問に堂々と応じていた。ただ、97年に天理(奈良)の二塁手としてセンバツ制覇の経験があり、大阪・河内長野市の自宅から応援に駆けつけていた父太輔さん(44)の話題を振られると、「すみません…」と急に言葉に詰まり、我慢していた表情が一気に崩れた。

5-0で快勝した阿南光(徳島)との準々決勝は4打数無安打に終わり、3試合で打率0割9分1厘。思うような結果が出ず、責任を感じて思い詰めていた。そんな時、準決勝前日の29日の夜、父からスマホに1通のメッセージが届いた。

「自分の結果は気にせず、チームのために頑張れ。お前が暗くなったらあかん。日本一の主将になれよ」

激励の言葉に「気持ちがすごく楽になりました」。準決勝では1点リードの3回1死から左越えの三塁打。2点を追う7回には先頭で中前打を放ち、2安打1得点1盗塁と奮闘も「こんなに応援してもらったのに。勝って恩返ししたかったんですけど、申し訳ないです」と悔やんだ。

「父はまだまだ届かない存在。夏に絶対甲子園に帰って来て、日本一になります」。親子Vへの夢は、まだまだ続く。【古財稜明】