高崎健康福祉大高崎(群馬)が初優勝した。主将を務める箱山遥人捕手(3年)を中心に、心技とも強いチームになった。

箱山は強肩強打で今秋ドラフト候補に挙がる。青柳博文監督(51)も「現時点なら捕手では歴代で一番いい」と評する。その歴代もすごい。阪神・長坂拳弥捕手(29)西武・柘植世那捕手(26)是沢涼輔捕手(23)広島清水叶人捕手(19)とプロ野球選手だけでも4人の捕手を輩出している。

箱山は「歴代捕手が全員すごくて、先輩を見て学ぶというか。隣で練習を見て学べる環境がすごいです」とし、さらに「それにやはり、木村コーチの指導が大きいと思います」と言う。柘植や是沢も木村コーチの名を挙げている。

木村亨コーチ(54)は17年からバッテリー部門を担当し、主に捕手育成に尽力してきた。基礎練習も徹底的に仕込むが、それ以上に「一番は『どれだけ大人としゃべれるか』ですね。コーチも含めて、自分の考えをしっかり答えられる子が試合に出ていると思います」と話す。例えば柘植は、入学直後から会話ができる1年生だったという。

いくら配球を練っても投げるのは投手だ。「こっちの意図するところをいかに投手に表現してもらえるか。自分のことばかり考えると態度やしぐさに出ます。うまく導けないと、投手を乗せてあげられない」。いかに気持ち良く投げさせるか。それを教え込む。

原点がある。帝京(東京)でプレーし、高3時には主将として春夏連続で甲子園に出場。バッテリーを組んでいたのは芝草宇宙投手(54=現帝京長岡野球部監督)だった。

個性的な名前で全国的な人気を博したエースに、何度も言われてきた。

「やる気分にさせてくれる捕手だよね」

当時からそんなスタンスでいた。「投手が怒ってもいいボールは来ない。厳しいボールを投げさせたいなら厳しい言葉よりも、投手をいい気分にさせてあげたほうがいいんです」。芝草氏と深めていった信念を、健大捕手陣に伝授する。

「捕手本人の感性の部分はすごく強いし、なかなか(指導も)難しいんですけどね」

そう笑いながらも、次々と好捕手を育て、DNAをつなぎ、健大を日本一にまで導いた。【金子真仁】

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