思い切り大舞台でバットを振る日大三の強打は、10年前の初優勝をほうふつとさせた。

 私は、初優勝時の日大三を担当していた。当時は、投打にきらびやかなメンバーがそろっていた。エースにオリックス入りし、現在も活躍している近藤。横浜入りした千葉も控えていた。打線もヤクルト入りした内田、中日入りした都築、ほかにも明大に進んだ原島らが主軸を務めていた。その秋のドラフトで実に4人がプロ入りしたのだ。

 広いグラウンドでバットを振り込み、恵まれた施設で小倉監督が伸び伸びと選手を育て、力強いチームをつくり上げた。

 10年前は1人1人の能力が高かったが、ドラフトが近づくと「あいつのプロ入りは大丈夫ですか」と私に聞いてくるなど、仲間を心配する優しさが印象的だった。

 今春の関東大会で、小倉監督は「今のチームは10年前のメンバーには及ばないですよ」と語っていた。だが、熱戦の中で力をつけ、決勝でも投打に力を発揮したチームは、日大三の中で「伝説のチーム」だった10年前に、劣らないものになったのではないか。【栗原弘明】