<高校野球北北海道大会:遠軽3-2駒大岩見沢>◇22日◇準決勝

 北北海道決勝は06年決勝と同カード、遠軽と白樺学園の顔合わせになった。遠軽は駒大岩見沢を振り切り、初の甲子園へ王手をかけた。2番河合和也二塁手(2年)が4安打をマークし、北見地区予選から5試合連続2ケタ安打となった“マン振り打線”をけん引。大会通算打率7割3分7厘を誇る絶好調男が、強豪撃破の原動力になった。

 遠軽の2年生河合が、縦横無尽にダイヤモンドを駆け回った。1点を先制された直後の3回表、2死から打席が回ってきた。「2死からでも得点できる打線。つなぐ気持ちでいたら、待っていた直球がちょうど来た」。シャープに振り抜いた打球は中堅を越えた。間一髪で二塁を陥れると、右手で握り拳をつくった。勝負を決めた3点が入った、逆転劇の口火となった。

 難病を乗り越えた根っからの野球少年だ。6歳の時、右足太ももに斑点ができた。両親に病院へ連れて行かれると、即入院を宣告された。診断結果は紫斑病。症状としては疲れやすい体質になり、体に異変も出てくることから、激しい運動を控えるよう勧められた。それでも、本人の気持ちは誰も止められなかった。母智恵子さん(40)は「病院のベッドでも、手からグラブを離さなかった」と振り返る。約1カ月間の入院と2年間の投薬治療を経て、小学2年の時に本格的に野球を始めた。

 1度も自分からは練習を休んだことがない。たった1回だけ、小学5年生の時に休まされたことがある。「その時は泣きじゃくっていました」(智恵子さん)。仕事の関係で、この夏初めての観戦となった母には試合前、1通のメールを送っていた。「絶対、甲子園に連れて行くから」。智恵子さんの胸は熱くなった。

 チームは5年ぶり3度目の決勝に駒を進めた。相手は06年決勝で1-9と大敗した白樺学園。ナインは当時の試合を、ビデオで繰り返し見てきた。河合は言った。「今日みたいに、自分たちの野球が出来れば」。72年北見工以来、39年ぶりに北見地区へ優勝旗を持ち帰ってみせる。【木下大輔】