<高校野球長崎大会:海星8-7清峰>◇24日◇決勝

 海星が延長12回の激闘を制して、1年前の雪辱を果たした。4点リードの9回裏、先発永江恭平(3年)が守りの乱れもあり清峰に追いつかれる苦しい展開。延長12回、山崎楓太右翼手(1年)の犠飛で勝ち越し、逃げ切った。永江と古賀咲也内野手(3年)は昨年決勝で長崎日大に敗れた悔しさを晴らした。海星は9年ぶり16回目の出場を決めた。

 涙が止まらなかった。校歌を歌い終えると、永江と古賀は寄り添うように泣きながらベンチへ走った。「1年前を思い出しました」と永江。昨年は負けて泣いた。今年は、甲子園出場を決めて泣いた。激闘が2人の涙腺を緩ませた。

 7-3と4点リードで9回裏を迎えた。「まさか」が起きた。永江が先頭打者に本塁打されると四球、守りのミスも重なり、1死も取れずに追いつかれた。加藤慶二監督(37)の脳裏によぎったのは「遠いんだな、甲子園」。しかし、サヨナラのピンチを切り抜け、戻った選手に言った。「この試合は清峰のものだったが、ここからは五分だ」。延長に入ってからもサヨナラの危機を耐え、12回に犠飛で勝ち越し。ついに清峰を振り切った。

 「疲れもあって、9回はブレーキが利かなかった。あそこでしっかり終わらせたかった。でも、勝ててよかった…」。1年前、長崎日大との決勝。永江は、9回の攻撃中に泣いた。この日と逆、4点リードされた最終回だが1死満塁のチャンス。永江は打席に入る前に泣いてしまった。「先輩たちがあきらめず、必死につないでくれたから…」。その時、一塁から駆け寄り「1人じゃないと分からせたかった」と永江を抱きしめて、励ましたのが古賀だった。甲子園の夢が破れた後の新チーム。永江が主将、古賀が副主将になった。

 あと1歩で届かなかった甲子園を目指すチームは、分解寸前に陥った。永江と古賀の対立が原因。ガツンと物言う永江に対し、チームの和を大事にする古賀が「そんな言い方するな」と注意。永江は「それじゃ闘う集団になれない」と反発。まとめるべき2人が、チームの空気を重くした。

 最後の夏を前に2人は危機感を抱いた。「2人だけで話してもダメだ」と3年全員で話し合う場を作り、チームの和を修復した。それが、最後まであきらめなかったこの日の戦い。大会直前に左足首を亀裂骨折した古賀は、この日も全力でプレーした。「自分たちは精神的に弱いと言われてきた。今は違う」と古賀。苦難を乗り越え、古豪が9年ぶりの夏をつかんだ。

 ◆海星

 1892年(明25)創立の私立校。06年から共学。生徒数は1452人(女子300人)。野球部は15年創部、部員数は67人。甲子園は春3度、夏は16度目。OBに元ヤクルト酒井圭一氏、元阪神平田勝男氏ら。長崎市東山手町5の3。清水政幸校長。

 ◆Vへの足跡◆

 

 

 2回戦11-0佐世保西3回戦10-2大崎準々決勝9-2諫早準決勝9-1西陵決勝8-7清峰