<高校野球栃木大会:作新学院17-5宇都宮商>◇31日◇決勝

 栃木では作新学院が宇都宮商を破り2年ぶり7度目の出場を決めた。

 最後の右飛を見届けた作新学院・大谷樹弘(しげひろ)投手(2年)は、両拳を握り締め雄たけびを上げた。宇都宮商を抑え、2年ぶり7度目の甲子園出場が決定。「最高です!

 番号に関係なく、自分がエースと思って投げました」。背負う数字は「17」。苦難を乗り越えたからこそ、優勝マウンドは格別だった。

 左膝の違和感は中3からあった。骨の分離症。ずっと痛みをごまかしてきたが、春先に限界がきた。少し曲げただけで鈍い痛みが走る。医者に「投げたいなら手術しかない」と言われ、春季大会をあきらめて2月末に手術。「夏は絶対マウンドに立つ」。投球が可能になったのは、今大会のわずか2週間前だった。

 リハビリと裏方作業に徹した3月。もう1つの試練が訪れた。震災で真岡市の実家が半壊。休日に寮から帰省しては、瓦が落ちた屋根にブルーシートをかけ、崩れた壁を補強した。

 苦労を重ねた大谷を、野球の神は見ていたのだろう。7月に入ってからの登録選手変更で17番に滑り込んだ。「膝の完治で下半身を使えるようになって、球の質が良くなった」おまけ付きだ。小針崇宏監督(28)の信頼も厚く、準決勝に続いて先発。雨による3日順延でも気持ちを切らさず、直球とスライダーだけで6回までを4安打無失点。9回は火消し役も全うした。

 打線は18安打17点と、栃木決勝最多得点で強力援護。決勝で敗れた昨年の雪辱も果たした。「目標は、やっぱりOBの江川卓さん」と笑う大谷が、江川を擁した73年以来の夏の甲子園勝利を目指す。【鎌田良美】

 ◆江川卓氏(野球評論家=作新学院OB)コメント

 「甲子園という場所には、なかなか出られるものじゃない。今回、『夢』を達成したのだからそこでは野球を楽しんできてほしい」

 ◆作新学院

 1885年(明18)創立の私立校。生徒数は3689人(うち女子1580人)。野球部は1902年に創部した。甲子園出場は春に8度、夏は7度目。主なOBは元巨人江川卓、ロッテ岡田幸文。所在地は宇都宮市一の沢1の1の41。長谷川勝比古校長。

 ◆Vへの足跡◆

 

 

 1回戦9-2那須拓陽2回戦13-3小山南3回戦9-3那須清峰準々決勝6-2宇都宮南準決勝5-3文星芸大付決勝17-5宇都宮商