<全国高校野球選手権:習志野6-1静岡>◇7日◇1回戦

 古豪対決は、習志野(千葉)が7回2死満塁から本盗を決めるなど鮮やかな攻撃を見せ、静岡(静岡)を下した。

 7回2死満塁で打者は4番。誰もが打席に注目した2球目。三塁走者の習志野・宮内和也主将(3年)はためらわずスタートを切った。頭から勢いよく本塁に突っ込むと、審判の「セーフ!」のコール。古豪静岡に2点差をつけ、拮抗(きっこう)した空気を変える鮮やかな本盗に「気持ち良かった!」と笑った。

 本盗のサインを実行したのはチームでも初めてだ。「投手が全然こっちを警戒してなかったし、モーションが大きかったので」とリードを大きく取った。相手エースが右足を上げた瞬間に、50メートル走6秒1の俊足で猛ダッシュ。普段から盗塁は選手の判断に任されている。石神康太コーチ(36)は「うちの選手は体も小さいし、走らないと勝てないんです」と説明した。

 動揺した静岡のエース原崎はクイックで投げ始め、球威が落ちた8回に再び宮内が走者一掃の3点適時三塁打。これには先輩も大喜びだ。バックネット裏に駆けつけたOB、ヤクルト小川淳司監督(53)は「のびのび戦っていましたね。自分はセンバツで緊張したけど、今の子は緊張しないのかな」と目を細めた。8回1失点で、自己最速タイの144キロをマークしたエース泉沢涼太(3年)も「お忙しい中来ていただいてうれしいです」と励みにした。

 2回の先制点は、昨夏準優勝時の東海大相模(神奈川)の主将・福山亮を兄に持つ福山慎吾外野手(2年)のスクイズだった。宮内は言う。「バントは練習時間の3分の1を割いてるし、塁に出たら走る。自分たちの野球をやるだけです」。小技がピリリと効いた習志野野球が、夏の甲子園をかき回しそうだ。【鎌田良美】