<全国高校野球選手権:作新学院3-2唐津商>◇13日◇2回戦

 作新学院(栃木)は唐津商(佐賀)に逆転勝ちし、49年ぶりの夏2勝を挙げた。

 作新学院に“怪物”へ対するコンプレックスはなかった。打者一巡までに唐津商・北方悠に最速153キロを含む150キロ台の速球を10球投じられた。小針崇宏監督(28)がナインに「速球が見えるか?」と聞いた。1回戦後の4日間で未知の剛速球を体感するため、打撃投手を2~3メートル手前に近づけて練習。前日は目慣らしのために、一部の選手が金沢・釜田と聖光学院・歳内の剛腕対決をスタンド観戦した。その成果を感じていたナインは「見えます!」と威勢良く返事した。

 速球に的を絞ることを決断した。バットを短く持ち、内角を投げにくくさせるため打席の内側ギリギリに立った。38年前の夏、OB江川卓氏が短くバットを持った相手に苦しめられ、2回戦で姿を消した。今度はその戦法を取る番だった。

 5回、同点に追いつき、なお1死三塁。2番板崎は150キロ連発をファウルでしのぎ、最後は変化球に食らい付いて勝ち越しの適時内野安打を放った。「いつもは指1本分だけど今日は3本分、短く持った。無我夢中でした」と振り返った。

 62年の全国制覇以来の夏2勝。若い力で築いた。小針監督は23歳で就任。寮で選手と寝食を共にし、選手の誕生日にはケーキも用意した。49代表校で最年少の28歳だからこその、ほどよい距離感。一方でエース大谷は「どの監督よりも厳しい。その中でやっているからバタバタしない」と言う。9回1死二塁は大谷から一塁手の飯野に迷わず継投して危機を乗り切った。

 「先輩が作った歴史を受け継ぎ、今のチームで1つずつ勝っていければ」と小針監督。怪物はいないが、今年の作新学院にはチーム力がある。【広重竜太郎】