<全国高校野球選手権:智弁和歌山8-7白樺学園>◇14日◇2回戦

 智弁和歌山(和歌山)が劇的勝利で2年ぶりに3回戦に進んだ。白樺学園(北北海道)に満塁弾を含む2本塁打を打たれて8回に勝ち越されたが、その裏に追いつき、同校初の延長逆転サヨナラ勝ちを決めた。

 打撃戦の結末はまさかの幕切れだった。智弁和歌山の延長10回裏攻撃。1点ビハインドを追いつき、なお1死一、二塁。小笠原が三塁前にバントを転がす。三塁手の一塁送球はファウルゾーンへと転がった。二塁走者の宮川がサヨナラのホームに飛び込んだ。

 先発全員、18本もの安打を放っても苦しみ抜いた。満塁弾で追いつかれ、8回に勝ち越し弾を浴びた。相手に傾く流れを、右翼守備で途中出場の主将・中村が押し戻した。8回1死二塁で同点の二塁打を放った。

 中村

 苦しかったことがよみがえった。こういう試合は絶対に落とせないと思いました。

 試練は続いた。9回裏1死満塁のチャンスを逃し、延長戦に突入。10回2死二塁で白樺学園・佐藤の飛球が風に流され、中堅、右翼、二塁手の間に落ちた。また追う側になった。ベンチに戻ると、2年の嶌が泣きだした。

 嶌

 9回の満塁で自分が打てていれば。3年生に申し訳なくて。

 エース青木が「泣くな。終わってへんぞ」と一喝した。その苦境でまた中村だった。先頭で中前打。1死一塁で宮川が同点二塁打。泣きじゃくる嶌の頭を青木は笑顔ではたいた。

 センバツは正左翼の中村が今夏控えになった。打力で後れを取った主将が2打席連続の安打でチームを救った。母和代さん(46)は「気が優しくて、言ってみればチームのお母さん。家でも部員をどうまとめたらいいかずっと考えています」と明かす。個性が強い周囲に苦労しながら、それでもいつも部員のことを考える。通算63勝にして初の「延長逆転サヨナラ」勝利を収めた高嶋仁監督(65)も「苦しんでつかんだ勝利は大きいです」とうなずいた。3回戦は日大三(西東京)が相手だ。【堀まどか】