<全国高校野球選手権:智弁学園9-4横浜>◇15日◇3回戦

 横浜(神奈川)がまさかの大逆転負けを喫した。3点リードで迎えた9回に大量8失点。エース右腕の柳裕也投手から左腕相馬和磨投手(ともに2年)につなぐ必勝パターンが崩れ、智弁学園(奈良)に屈した。

 智弁学園・小野山の飛球が、バックスクリーンすれすれのところで中堅手のグラブに収まる。9回2死一、三塁。あと1人だ。「ホームランにならなくてよかった。これで勝てる」。横浜・相馬の気がほんの少し緩んだ。この一瞬が、命運を大きく変えた。

 続く6番小野に130キロの直球を中前に運ばれ、4-2。死球、右前打で同点に追いつかれてしまった。次打者に四球を与えて相馬は降板。後を継いだ3投手も相手の勢いを止められなかった。相馬は「準備はできていたのに…。2死の後は、打ち取った当たりもポテンヒットになって、精神的にこたえた。自分のせいで負けた」と責任を背負い込んだ。

 信じられない光景を、先発の柳は目を真っ赤にして見ていた。8回まで3安打1失点と好投。9回先頭打者に中前打を許し、交代を告げられていた。「エースなのにマウンドを守れなくて悔しい。相馬なら抑えてくれると思った」と涙した。誰も予想しなかった展開だった。センバツまでエースだった4番手の山内は、捕手を座らせて1球しか投げないまま、今大会最初で最後の出番を迎えてしまった。

 「右腕の柳→左腕の相馬」の継投は、神奈川大会全7試合を勝ち抜いた“必勝リレー”だ。甲子園通算48勝の渡辺元智監督(66)は「ずっとこのパターンでやってきた。柳の球速も落ちていたし、代えずに逆転されたら悔いが残る。私としては代えるしかなかった。うまくいかなかったのは、監督の責任です」とうつむいた。

 試合後、渡辺監督は選手を集めて言った。「悔しいけど、これが人生だ」。平成最弱と言われ、4季連続で甲子園から遠ざかった名門を、春夏連続出場までこぎつけた世代。東海大相模に次ぐ神奈川県勢の春夏連覇は果たせなかったが、横浜ナインはこの黒土のグラウンドに酸いも甘いも教えられ、潤んだ視界で聖地を去った。【鎌田良美】