<全国高校野球選手権:作新学院7-6智弁学園>◇18日◇準々決勝

 作新学院(栃木)は9回表に逆転、智弁学園(奈良)を下し、49年ぶりのベスト4を決めた。

 この夏を盛り上げる土壇場の逆転劇に、作新学院のドラマが加わった。4回以降は1安打に抑えられていた智弁学園のエース青山攻略に、小針崇宏監督(28)の指示は強攻策だった。1点を追う9回の攻撃前、「相手は勝ち急ぐ。そこに生まれるスキを突くぞ。バントはないから、1球目から振っていけ」と1番石井から始まる攻撃陣に逆転のシナリオを託した。

 わずか9球、3番佐藤までの3連打で追いついた。佐藤は「打席に向かう前、『お前がチームで一番いい打者だ』と。監督にそういう風に言われたのは初めて」と意気に感じ、右中間へのポテンヒット。石井は「落ちると思ったし、練習を見て(外野手の)肩が強くないのを確認していた」と三塁コーチの制止を振り切って突入した。仕上げは、この打席まで打率1割台の5番内藤。「自信を失いかけたけど、それでも使ってくれる監督のために、外野まで運びたかった」と内角球に詰まりながら、右翼定位置まで勝ち越し犠飛を運んだ。

 現チームは一冬越えてもどん底から始まった。「あれがターニングポイント」(小針監督)。3月26日、春日部共栄と練習試合ダブルヘッダーで計24失点の惨敗。グラウンドに戻ると、小針監督は心を鬼にして罰走を化した。80メートルダッシュを野手は失点×10の240本、バッテリー陣は100本多い340本を深夜まで、涙ながらに完走した。佐藤が「県1回戦で負けてもおかしくなかった」というチームが、目を覚ました。甲子園では1、2年生バッテリーに注目が集まるも、小針監督は「3年生の意地だったと思います」と9回、2番から5番まで続く上級生の執念に目を細めた。史上初の春夏連覇をつかんだ49年前の偉業に最接近。オールドファンに懐かしい名門が、再び頂点を狙える位置にきた。【中島正好】