<秋季高校野球北海道大会:駒大苫小牧7-1室蘭清水丘>◇16日◇室蘭地区Aブロック代表決定戦◇苫小牧緑ケ丘

 駒苫の“持ってる男”がチームを乗せた。室蘭地区で駒大苫小牧が室蘭清水丘を下し、3年ぶり12度目の代表を決めた。1年生の伊藤優希中堅手が4回に先制打を放つなど、3打数2安打と活躍した。中学時代は硬式のサンリーグで世界選手権に出場。04年夏甲子園優勝時の主将だった佐々木孝介監督(25)から「持ってる」と評される通り、ここ一番で存在感を見せた。

 大器がベールを脱いだ。駒苫の7番伊藤中堅手が、4回表2死二塁から左前へ先制打を放つなど、3打数2安打1打点。7回の打席で退いたが、2盗塁も決めるなどチームに流れを呼び込んだ。自身初の全道出場に「先輩(投手)がゼロで抑えていたので、早く点を取りたかった。調子は良くなかったけど、監督にトップから素直にバットを出せとアドバイスをもらったおかげです」と初々しく笑った。

 175センチの体には“スピードDNA”が流れる。両親はスピードスケートの元日本代表。父真介さん(49)は88年カルガリー五輪に向けた特別強化選手で、母美由起さん(45)も87年世界スプリントに出場している。100メートル走は11秒3。2回に内野安打、4回には鮮やかな二盗、三盗と受け継いだスピードをいかんなく発揮した。「足には自信がある」と誇らしげに口にした。

 身体能力に加え、父真介さんが話す「弱音を絶対に吐かない気持ちの強さ」が武器だ。5月下旬に右腿の肉離れから膝を痛め、約2カ月間、野球ができなかった。練習に復帰した初日、帰宅すると両親に「野球って楽しい」と笑顔で伝えたという。サンリーグ・苫小牧クラブの中学3年時、日本代表としてAA世界選手権に出場した逸材は、逆境を乗り込え、精神面で成長した。

 小学1年のころ、チームの黄金期を切り開いた佐々木監督の勇姿をテレビで見て、あこがれ、駒苫に進学を決めた。兄亮太さん(20)もOBだが、甲子園出場は逃している。伊藤は「あこがれの人と同じユニホームを着てプレーできるのがうれしい」と話した。青年指揮官は「何かやってくれそうな勝負強さがある。何か持ってる」と信頼を寄せる。

 昨秋も今夏も本命と注目されながら、道大会出場は4季ぶり。伊藤は「1年で1桁の背番号は自分だけ。責任を感じる。センバツの代表権を取れるように思い切ってプレーしたい」と力強く言った。【松末守司】