<センバツ高校野球:浦和学院11-1山形中央>◇29日◇3回戦

 山形中央は浦和学院(埼玉)に敗れ、初のベスト8進出はならなかった。初戦(2回戦)の岩国商(山口)戦に続いて先発の高橋凌平(3年)から高橋和希、石川直也(ともに2年)と投手をつないだが、6回以降に突き放された。大会直前に右目下を打撲して本調子を取り戻せなかった石川をエースに育て上げ、夏の甲子園に帰ってくる。

 流れが変わったのは6回だった。山形中央の先発・高橋凌がこの回先頭の浦和学院4番の高田涼太(3年)に左越えアーチを浴びる。立ち上がりに3連打でいきなり2失点したが、その後はテンポ良く丁寧にコーナーを突いて2回以降は無失点。5回の攻撃では自ら適時打を放ち、1-2と詰め寄っていただけに痛い被弾だった。さらにヒットを続けられたところでマウンドを降りた。

 状況を見ながら継投を考えていた庄司秀幸監督(36)が、高橋和をマウンドに送る。「流れを持ってこようと必死だった」と2番手左腕。しかし死球にワイルドピッチでピンチは広がり、適時打を浴びて2点を追加された。「相手打線が怖くなってしまった。打者が大きく見え、圧倒された」。2回2/3で6失点。8回途中から背番号1の石川が登板したが、19日に右目下を打撲した影響から、本調子には遠かった。結局、浦和学院打線に計14安打を許し、11点を失った。庄司監督は「ベストの状態でマウンドに上げられなかった」と石川のアクシデントを悔やんだ。

 新チーム以降、投手力が課題だった。秋季大会もこの日投げた3人を含めた5人の継投で戦っていた。チーム最多の28回を投げた高橋凌は本来野手希望。リードは今でも全て捕手任せの状態だが、それでも登板せざるを得なかった。

 昨年の冬、庄司監督は羽賀貴大捕手(3年)にエースを誰にするか相談した。羽賀は「来年の夏も見据えて、石川を育てます」と答えた。羽賀は「お前がエースだ」とは石川に伝えなかった。だが、石川にも次第に自覚が表れた。190センチで細身の体を変えようと冬は食べまくり、5キロ増の75キロになった。下半身を強くしようとウエートと走り込みも重点的に行った。寮の同じ部屋に住む高橋和も「努力の面で勝てない。あいつがエース」と認めていた。

 「魂を込めて投げたい」。大会前に初めて背番号1をもらい、そう言い切った石川。本当は先発で投げたかった。「今回甲子園で投げられた経験を生かして、磨きをかけたい」。夏に向け再び山形で鍛える。

 浦和学院に迷惑をかけたくないと、山形中央ナインは誰も土を拾わなかった。「こんなに悔しかったことはない。早く山形に帰り練習したい」と試合後、庄司監督は話した。1勝の喜びと、大敗の悔しさを糧にし、夏の甲子園に戻ってくる。【高場泉穂】