<センバツ高校野球:県岐阜商5-4大阪桐蔭>◇30日◇3回戦

 大阪桐蔭の史上初の3季連続優勝は夢に終わった。ドラフト1位候補の森友哉捕手(3年)が、右足ふくらはぎ痛で欠場し、県岐阜商に敗れた。1点を追う9回裏2死一、二塁では中前打で本塁突入したが、ラフプレーとみなされ試合終了。今年から徹底された「森ルール」が適用される皮肉な結末となった。

 ベンチ裏のお立ち台から下りるとき、右足を踏ん張った森友から「痛っ…」と小さなうめき声がもれた。試合を欠場しても、敗戦のお立ち台に呼ばれたのは主将だった。

 「きょうの敗戦は意味のある敗戦。粘りの野球も出来た。悔しいけど、得るものはたくさんあった」と気丈に話し続けた。ただ最後「動くと痛くて…。最後、あと1本でした」。前日のシート打撃の走塁中に打球を受けた右ふくはらぎの激痛をこらえ、声を絞り出した。

 皮肉な幕切れだった。1点を追った9回2死。2番峯本の左前打から春夏連覇校は底力を見せた。笠松の打球も失策を誘い、2死一、二塁で福森につないだ。主将は3人が打席に向かうたびに西谷浩一監督(43)の指示を伝え、福森には「ここで打ったらヒーローや」とささやいた。福森は中前にはじき返した。

 だが中堅手は本塁へ好返球。待ちかまえた捕手に激突した峯本は守備妨害でアウト。昨秋の世界選手権(韓国)で、森友が米国の走者に飛ばされたことで強化徹底された“森ルール”が適用された。「走者はやりたくてやったわけじゃない。(点を取りに行く上で)仕方ないけれど、高校生はやっちゃいけないプレーなのかな…と思います」。言葉を選びながら顔をゆがめた。

 前夜遅くまで治療を受けた。実は開幕前に左手首も痛めていたが、西谷監督の前では「打てなかったとき用に保険かけてます」と笑いとばした。体も気持ちもタフな主将だからこそ、周囲も出場への可能性を信じた。朝に腫れはひいた。痛みを軽減できるようにテーピングを施した。それでも「距離が長いマウンドへの伝令には出せない」(西谷監督)状況で、勝負どころの一振りも無理だった。

 試合後の円陣。「高校野球は終わりじゃない。夏にリベンジできるよう頑張ろう」と監督から声がかかった。キャプテン森に率いられた大阪桐蔭が、雪辱の夏へ再スタートを切る。【堀まどか】

 ◆“森ルール”とは

 大阪桐蔭-県岐阜商戦の9回、大阪桐蔭の二塁走者が本塁に突入したプレーは守備妨害をとられて、アウトになった。捕手は落球したが、走者の激しい接触がもたらしたとして、橘球審がアウトを宣告した。赤井淳二審判副委員長(61=日本高野連審判規則委員長)は試合後「審判は、アマ野球の内規通りに判定しました」と説明した。

 昨夏の「18U世界選手権」で、森友哉捕手(大阪桐蔭)が、米国選手から体当たりされたこともあり、2月にアマ内規に「危険防止ラフプレー禁止ルール」が加えられた。攻撃側の選手が、落球させよう、触塁しようとして意図的に体当たりすることや、乱暴に接触することを禁じる。審判が故意の接触とみなせばアウトを宣告するとしている。大会前の監督会議でもこの「ラフプレー禁止」がアピールされた。にもかかわらずそのプレーが行われたことで、大会本部は大阪桐蔭の西谷監督を厳重注意とし「より細かい指導をしていただきたい」とルールの徹底を言い渡した。